2015年10月7日水曜日

半期ごと5本連続10万部越え 3本目

七期生
七期生は2013年8月にスタートした。
メンバーの内訳は一期生としてミリオンセラーを作った出版社から2名、同じ出版社から5人目の参加となる新入社員、2期連続して参加する出版社から2名、初めて参加する出版社から1名で、男性5名、女性1名の構成だた。そして4月入社の新人が多かった。

3年連続10万部突破した出版社の新人は、3年前の作品で、5万部を突破して止まってしまった作品『仕事と勉強を両立させる時間術』にもう一度火をつけて、10万部を超えさせたいと言って計画書を提出した。

同一出版社から5人目の参加となった4月入社の新人は、自社の得意な嫌ミス系の作品『隣人』を取り上げて10万部計画を実施した。
 
直接取引の出版社でミリオンセラーをつくった伝説の営業マンの後輩は、自社のビジネス大賞受賞作品『経営戦略全史』を取り上げた。
2800円もする作品を10万部にするのは大変だろうと周りのメンバーは危惧していたが、本人は会社の政策だから頑張ると言っていた。

一期生で30万部計画からスタートして、爆発的なミリオンセラーを作った塾生の後輩の新人は、何を取り上げていいか迷っています。もう少し時間を下さいと言って、次回までに提出すると約束をした。

「自分の会社は手帳の出版社とよく言われます。でも、自社にも良書があるのだということを皆様に知っていただきたいと思っています。今回取り上げた『心のふしぎ なぜどうして』は初速がよくて、実売がでている作品なので、何とか10万部を超えるベストセラーに仕上げたい」
初参加の出版社のTさんはこんな風に語っていた。

「今回はファンも多く実力派だけれども、ブレイクしきれていない大倉崇裕の『福家警部補の挨拶』を仕掛け、著者の代表作に育てたい。シリーズ続編やほかの著作もあり、成功すれば他作品の増売も期待できるという思惑もあります」
3期連続10万部越えを狙うSさんはそう語っている。

塾生の取り上げた作品はビジネス書が2件、ミステリー系の文庫が2件、文芸書が1件、児童書が1件だった。

計画の変更
未提出だった今年4月入社の新人が、迷いに迷って出した計画は文芸ダービーにノミネートされている作品だった。

たまたま営業先の店の文芸書担当者が「フェアの中ではこれを売りたい」と言ってくれたこと、ダービーで一位を取れれば他書店にも波及させることができるかもしれないと考えたことが10万部計画に取り上げた理由だった。

文芸ダービーでは見事に一位を獲得した。11月から2か月間キャンペーンが始まる予定になっている。

2800円の『経営戦略全史』で10万部計画を狙った新人からも計画変更の申し出があった。
会社が10万部を狙っているのは分かるが、それは長期計画なので、半年で10万部を狙うベストセラー塾の計画には不向きだと言われた。

今売れている作品を積極的に売り伸ばす作戦に変更しようとしたところ、それに見合った作品『うまくいっている人の考え方完全版』で30万部計画を実施したいと言って計画を変更した。

次に、S氏が計画の変更を申し出た。営業部内では『大きな森の小さな密室』の成功以来、営業マン一人一人が売れ筋商品の発掘競争をしている。
現在も『副家警部補の挨拶』の他に『奇譚収集家』と『ハルさん』と三つの作品を営業マンが各地の書店へそれぞれ仕掛け売りの働きかけをしていた。

その中で『ハルさん』と『奇譚収集家』が良く売れていて、会社創立記念日に定例化している新聞広告もこの2本立てで掲載することになった。
S氏が取り上げた『副家警部補の挨拶』は、営業部内では何時の間にか忘れられた存在となって売り上げも停滞していった。

9月になって、『ハルさん』が文庫ダービーに参戦することが決まり、その時点で、S氏は宿題を『ハルさん』10万部計画に変更することをはかって、他のメンバーから賛同を受けた。

中間報告会
寒さが本格的にやってきた1月の下旬、七期生の中間報告会があった。

七期生の報告の概略。
H氏の取り上げた『ある奴隷少女に起こった出来事』は文芸ダービーの第一位を取って、チェーン全体で2千冊超えの販売実績を作れた。外国文学なので他の書店やチェーン店への仕掛け売りの広がりはなかなか難しく、2万部で止まっている。

『隣人』
得意の嫌ミス系作品で10万部を狙ったが、7万部を過ぎたあたりで動きが止まって、次の重版ができないでいる。何とか10万部にまでもっていきたいのだが、手詰まりの状態になってしまっている。

『仕事と勉強を両立させる時間術』
5年前に5万部まで売り伸ばした作品に再度光を当てようとしたが、3万部重版ができて8万部までにすることはできたが、もう一歩はじける展開が作れなくてそこで止まってしまっている。

『心のふしぎ なぜどうして』
沿線の中核駅の仕掛け売りがハマって拠点づくりは大成功。他の都市でも強い売上が作れたことで、10万部計画のストーリーに乗せて仕掛け売りの全国的な展開が容易になった。現状で16万8千部まで来ている。まだまだ動きは止まらない様子なので、20万から30万部が目指せそうだと思う。

『うまくいっている人の考え方完全版』
地方の担当エリアで200冊展開の店を数多く作ることができ、営業の中で新人賞を取ることができました。部数も伸びて10万部は楽に突破しています。

『ハルさん』
文庫ダービーで一位をとれたし、朝日新聞の「売れてる本」にも紹介され売上がブレイクし、重版のロットが一気に大きくなって12万部を突破した。

七期生は4月入社の新人が4人、3年目女子とベテラン男性営業マンの6人でした。そんな構成のメンバーがそれぞれに行った計画は3件が10万部を超え、ベストセラー成功率50%という結果を出しています。

S氏が報告会で語る
新刊が思うような実績を上げられない状況が続く中で、仕掛け商品へ注目は集まっています。ヒット作の関連本や類似作品も良いのですが、新たな作家、独自の作品を押すと、書店員や読者の中に出版社の印象が強く残ります。

それが、「良い作品だから」「思い入れがあるから」という印象を与えることができると、なおさら強い反響があると思っています。今回チョイスした作品はまさにそのような作品で、刊行時から営業部の士気は高いものがありました。

近年、当社といえば日常の謎と言われたりもしますが、ある意味ではとても弊社らしい作品であります。
書店員の中にいる固定ファン層を中心に営業をかけると、拠点作りは比較的しやすい側面がありました。

『ハルさん』は単行本刊行時から一定の評価は受けていました。ほのぼのとした日常の謎でありつつ、家族愛、親子愛を描き、ラストには感動の結末が待っている。それはもう卑怯なくらい泣かせる作品です。
日常の謎が好きな読者はもちろん、いわゆるベストセラー購買層にも十分にアピールができると思います。

著者は児童書のフィールドで活躍している作家ですので、良い意味でミステリーの印象は薄く、幅広く受け入れられる見込みもありました。

文庫化に際し、保存してあった単行本を献本に利用しました。仕掛けの強い店舗、娘をもつ男性書店員、女性向けの店舗を中心に案内をして、発売前に読んでいただくことにしました。

反応はおおむね良好で、初回の指定配本の希望数も、ある程度まとまった数を集めることができました。
事前に読んでくださった書店員の中から、3名の方に送って頂いたコメントを使用した拡材を作成して、初期から仕掛け売りをしていただく店に送付することにしました。

『ハルさん』は3月19日に配本しました。御茶ノ水の店では200冊展開でスタートし、売れ行き好調で4月上旬には100冊の追加注文をいただきました。

池袋の店でも150冊投入して20冊の注文をいただき、丸の内の店では150冊投入で、4月上旬に50冊、下旬にも50冊の追加注文をいただきました。

その他100冊展開の店や80冊展開、50冊展開の店でも初速はおおむね良い数字が出ていました。
50冊以上の受注で、特製パネル付きで商品展開していただいた店は25店舗ほどありました。拠点づくりは、おおむね成功といった感じでした。

10万部計画の次のステップは、拠点以外の店やチェーン店への展開、仕掛け売りの書店を増やす営業です。

御茶ノ水の店でランキング3位に入るなど、全体的に好調な出足を示しました。購買層をチェックしたところ、自社ファンだけではなく、ライトミステリ読者や、女性を中心としたベストセラー購買層がメインとなっていると判明しました。

御茶ノ水の店の動きが良かったので、その店の担当者の作成したPOPを使わせて頂くことにしました。POPのコピーを使って新帯を作成して、「感動」「泣ける」をアピールポイントに切り替えることにしました。

パネルも手書きスタイルで新調し、仕掛け店を再度募りました。すると、堅調に動きつつ、徐々にではあるが仕掛けが成功する店舗も増えてきました。

だが、どちらかというと、同時進行で仕掛けていた『奇談蒐集家』の方に書店員の注目が集まり、『ハルさん』は思うようには広がっていきませんでした。

それでも、売れ行き良好であることをアピールしつつ、粘り強く仕掛け売りの広がりを作る営業活動を続けていきました。いくつかのチェーンから取りまとめていただいて、それなりの数での追加注文も見受けられるようになりました。
 
7月に会社創立記念日の広告出稿があり、複数銘柄ではあるが、ハルさんも出稿することができました。
全五段見開き広告にそれなりの大きさで掲載することにして、この情報をもとに再度受注を促進する営業を繰り返しました。

ここでも一緒に広告掲載した『奇談蒐集家』の方が受注は多く集まりました。一方で、関西の駅系の書店の複数の店舗や、池袋のデパートにある書店で仕掛けが成功して、『ハルさん』の仕掛け売りをする店舗も着実に増えていきました。

9月になって、文庫ダービーの銘柄に選ばれたとのご連絡をいただきました。この時点で、10万部計画の銘柄をこちらに変更したいと考えました。

9月下旬、書評家のTさんより、朝日新聞の書評欄の『売れてる本』掲載のオファーをいただきました。
この情報を基に主要チェーン店やターミナル店を中心に受注を募り、10月3日の重版配本を行い書評掲載に備えました。

10月6日朝日新聞「売れてる本」に掲載され、一度仕掛けを終えた書店からも再度仕掛ける動きが見え始めました。

11月10日、読売新聞に半五段広告を掲載することが決まり、それに合わせて13刷を決定しました。
さらに文庫ダービー第一位の決定に合わせて14刷りが決定しました。

12月より文庫ダービーの拡販キャンペーンが始まり、初回5000冊を投入して、大きな店頭展開が開始されました。

1月4日、ラジオにて本上まなみと『ハルさん』の著者藤野恵美が対談をしました。それを受けて、2月より本上まなみ推薦帯にて出荷が開始されました。

こうして、初版1万2千部でスタートした『ハルさん』は、14刷りまで刷りを伸ばし、累計12万部に到達しました。

以上がS氏の報告です。

2015年10月1日木曜日

半期ごと5本連続10万部越え 2本目

六期生
2013年1月にスタートした六期生は男性が5名、女性が2名が参加した。そのうちの3名は初めて参加する出版社だった。多目の人数でスタートしたのだが、期間中に活動の拠点が都心から沿線の中核都市に移ったせいか、途中離脱したメンバーがいた。

I氏は売り伸ばし塾で10万部計画を成功させたのO氏の後輩だった。彼らはミステリーやSFの文庫が多い出版社に勤務している。文庫出版社の割には販売部数もそれほど大きくはなく、どちらかというと熱烈な固定ファンに支えられている中小の出版社と言われている。

10万部突破を果たしましたが、1本だけでは会社としての営業の革新ができたとは言えない。だから、君も塾に参加してベストセラーを作り出すノウハウを学んでほしい」
O氏からそう言われて参加したI氏は『模倣の殺意』を取り上げて15万部計画を提出した。

売り伸ばし塾でリベンジを果たしたM氏の後輩のSさんは、M氏が取り上げて成功した作品と同じように、発売当初から初速が出ていた『年利15%で増やす資産運用術』を取り上げた。

五期生に参加して11万部突破を報告したT氏の後輩Y氏は、10万部をねらえる作品が見当たらないと判断して、前著『気配りのルール』で2万部超えしている女性の著者の新刊『誰からも好かれる女の人と運を引き寄せる習慣』を取り上げ、細かく刻んだ5万部計画を出してきた。

大商談会で出会った先輩社員の紹介で参加してきたK氏は、2刷で5万部の文庫のミステリー作品『スリープ』を取り上げた。同著者の他社作品では10万部突破が多く出ているのに、自社の作品はそれほど伸びていない。そこに売り伸ばしの余地があるのではないかと考えて取り上げたと言っていた。

一期生に3名が同時参加した出版社から久々に参加したTさんは、同社のベストセラー作家の作品に連なるイヤミスの作品『凍花』を取り上げてきた。計画書には「私のミリオンセラー計画」とりあえず20万部計画と記入されていた。

顔見知りに誘われて参加した大手出版社のN氏は、初版部数1万部でほぼ8割消化した『戦略おべっか』を取り上げた。特定の店で仕掛け売りをすることで認知度を上げ、新規の購買層を獲得し、1ヶ月後に2千部重版をして1年後に10万部にすると言っていた。

I氏が計画を語る
2004年初版1万部でスタートし、刊行直後から「『慟哭』の次はこれだ!」というセールスポイントで営業強化したミステリーの文庫作品がありました。

この作品を気に入ってくれた多くの書店員の後押しで重版を重ね、13刷り4万5千部まで売り伸ばしました。しかし、その後は売上が落ち着いてしまって、ここ1年ほどはほぼ品切れ状態になっていました。

2012年12月、B書店グループから声がかかり、B書店だけで販売するオリジナル商品の銘柄として取り上げられました。
B書店グループだけのために4000部を重版して、12月13日に全量納入しました。すると爆発的な初速実売が出ました。

搬入してから10日間の販売実績を調査したところ、20~40冊台の売上7店舗、50冊以上が2店舗、140冊以上が1店舗と、驚異的な数字をたたき出しており、チェーン全体でも1000冊を超える実績となっています。

すぐに追加注文の依頼が来ましたので、1月に入ってから3000冊を重版して搬入しました。勢いは全く衰えていません。特に新大阪の店では1ヶ月で1000冊以上の実績になりましたし、週間ランキングの第1位を数回にわたって獲得しています。

刊行直後であった湊かなえや有川浩などの全国的なヒット作品を抑えての一位というのは、かなりインパクトがあると思われます。さらに、2月の上旬、中旬と2回に分けて、合計4000冊を追加搬入することになっています。

現在重版中の17刷りが2月22日頃出来上がります。その時点で累計の刷り部数は5万7千部になります。B書店との約束の独占販売期間は2か月ですので、そろそろ期限が切れます。他の書店への営業活動を開始しようと考えています。

作品のタイトルは『模倣の殺意』です。いわゆる叙述トリックを使ったミステリーで、ラストに大どんでん返しの結末が待っています。

帯の“解説は先に読まないでください”というコピーもインパクトがあります。B書店グループの販売実績を参考にすると、特にビジネスマンの多い書店での売り伸ばしが期待できます。

品切れ重版未定で、絶版の危機にあった作品を一つのチェーン店さんの取り組みで復活できたというストーリー性もあります。

重版の部数のうち弊社の在庫分が1900部できますので、ここをスタートとしてパイロット店をつくり、売り伸ばしをしたいと考えています。

売り伸ばしの際に拠点づくりの観点から重点を絞った取り組みをしようとしています。そのため今回の重版では候補書店以外は基本的にご案内をしません。

営業部内での討論の結果、15店舗ほどに絞り込んで案内をすることにしました。その際に重視したことは次の4点です。
1 100冊以上の展開が望める
2 瞬発的に大きな売上が見込める店舗
3 ビジネスマンを見込める客層の店
4 チェーンのバランス

現在、受注済みの店舗は300冊と150冊が1店舗、100冊が3店舗、その他もろもろとなっています。
そして、次回展開分に向けた重版を申請しました。部数は8000部です。その内訳は、
1 先行展開店舗への補充分1000冊
2 新たに30店舗を目安に同規模の展開を希望 4000冊+1000冊
3 B書店の一括管理が終了する時点での単店からの注文への対応2000冊

出荷目標は3月上旬です。この次回重版分で18刷り6万6千部となります。第一陣の初速を見てさらなる重版も視野に入れます。

今後の目標
3月下旬出来の19刷からさらに30~50店舗に拡大したい。
4月下旬出来の20刷ではGWに合わせて注文書を全国一斉FAX送信して、仕掛け販売を一気に広げる予定です。

これらの実績を基に5月の朝日新聞半5段広告に加えたいし、それ以外のサンヤツ、雑誌の小枠の広告も加えてもらおうと考えています。
以上が15万部計画の説明です。

うちなら3万部ね
計画書の説明の後の質疑応答。
「B書店グループはなぜこの作品に着目したのだと考えていますか」
「昔、売れていて、今、品切れ状態の作品から選ばれたんじゃないかと考えています」
「オリジナル商品にするためにはそういう風に選ぶと思うんだけど、なぜ御社のこの作品に目を向けたか興味深いところですね」
「うちの文庫のファンがメンバーの中にいて、特にミステリーには相当詳しい方なんじゃないかと思います。もしかしたら彼が着目したのかも」

「よろしいでしょうか」
Tさんから声がかかった。
「在庫分の1900冊を使ってパイロット店を作ると仰っていましたけど、その後の8000部の重版というのはおかしくありません?」
「私もそう思うよ。B書店の独占販売をテストマーケティングと捉えると、いまさらパイロット店をつくるなんてまどろっこしいんじゃない」
I氏は返す言葉もなくしどろもどろだった。

「うちなら3万部ね」
その時、Tさんのきつい一言があった。

「テストから本格的な拡販に移るタイミングだろうから、ここで一気に強気の部数を重版して、全国的な展開に持っていってもいいんじゃないかと思う」
ダメ押しの発言もあった。

会社に持ち帰って上司と相談しますと言うI氏にさらに他のメンバーが言葉を重ねた。
「計画書は15万部計画になっているけど、B書店グループだけで約2か月で1万Ⅰ千冊搬入しているんなら、一気に30万部計画でもいいんじゃないかと思います。計画も練り直したほうがいいのでは?」
これもまたきつい一言だった。

I氏はみんなの言葉を肝に銘じて会社に帰った。
営業部の会議でTさんのセリフを含めて質疑応答部分を正直に話し、重版部数の再検討をお願いした。そうして決まった部数が2万部だった。

「うちなら3万部ね」
この言葉は会議に参加した全員の胸に刺さった棘になったのだろう。重版は2万部に変更され、I氏は計画書を書き直して、30万部計画として再提出した。


中間報告
梅雨の晴れ間が覗く6月の最終日は六期生の中間報告会の日だ。都心から沿線の中核都市に場所を移して通うのが不便になったためか、7人で始まった会合から2人が離脱して塾生は5人になっている。

Sさんの手掛けた作品は当初、『年利15%で増やす資産運用術』だったが、6刷り3.6万部を刷ってから全く動きが止まってしまった。どうにも営業のしようがなくなってしまったため、計画を作り直し、作品を変更して改めて挑戦することにした。

5月末にテスト販売をした『1週間で美人に魅せる女の磨き方』が一般発売前に重版が決まったことを受け、この作品を取り上げることにした。すぐにパブにも取り上げられて、1ヶ月で5万部を超える重版をしている。今後は30万部を目指したいと報告した。

『誰からも好かれる女の人と運を引き寄せる習慣』はそこそこの初速は出ていて、従犯もできて早々と2万部にまで到達した。だが、その後は他の売れ筋作品が出たために営業部の足並みがそろわなくなってしまった。全社一丸の活動はできず、拡販の時機を失してしまい2万部で終息した。

『凍花』は初版2万部と多目の部数でスタートし、手持ち在庫を増やし営業部主導で書店での仕掛け売りの拠点づくりを行った。仕掛けに応じてくれた書店を中心にほどほどの初速を出してきた。

刷り部数は順調に伸びているのだが、販売実績のブレイクスルーができず、重版のロットの拡大がままならず、現在は6刷り5.4万部。
T屋グループで3000冊の受注があり、今後にまだ期待が持てる状況だ。他の書店チェーンや地域を絞っての展開を目指して、これからも地道に拡販を続けていくつもりだ。

『スリープ』は手持ち在庫の1000部を使って、チェーン本部に拡販を働きかけ、受注はできたのだたが、拠点中心の配本ができず、総花的な配本となってしまった。結果として強烈な売上が作れず、重版の検討材料にもならず、部数の進展とはならなかった。

『戦略おべっか』手持ち在庫を活用して拠点づくりを目指したのだが、その店で強い売上が作れず拠点づくりに失敗してしまった。そのせいもあって他の書店への仕掛け売りの広がりなどできる状況ではなかったようだ。


I氏が語る
出だしはB書店グループのオリジナル商品としての拡販でした。全店で4000部納入して始まった拡販は驚異的な販売実績になって、都合1万1千部を2ヶ月間で納入した。

2か月経って独占販売の約束が終わり、他の書店への営業がスタートする時点で15万部計画をスタートさせましたが、Tさんの「うちなら3万部ね」の一言で8000部の重版が2万部に上方修正されました。

計画書を書き換え、30万部計画で再スタートを切りました。1900部の手持ち在庫では、100冊以上の展開ができる店を中心に営業をスタートさせましたが、出だしから好調で追加注文が殺到しました。

重版のロットを大きく修正した2万部重版では、B書店グループの実績を基に、チェーン店本部への営業を強化させ、取りまとめの依頼をしました。好調な受注活動に支えられて、次回の重版は5万部に決まりました。

4月に入ってプレスリリースが成功してパブに取り上げられる回数が増えていきました。4月2日、読売新聞の文化面で取り上げられることが決まり、4月最初の重版は5万部になりました。
4月14日の朝日新聞『売れてる本』にも連続して紹介され、ゴールデンウィーク対策も含め、今度は10万部重版が決定しました。

その結果、4月は1か月で15万部の重版となり、累計では29万部を超えました。5月中旬出来でも3万部重版を決めていましたので、公称30万部突破とすることにしました。

仕掛け売りの店舗はどんどん増えていて、A4パネル展開店舗は1000店を超えましたし、チェーン店への案内はほぼすべて完了しました。大手のチェーン店には重版決定や書評掲載の度に案内をしています。

Y書店チェーンでは、3月からの全店仕掛け開始からほぼ週売700~900冊をキープしていましたが、朝日新聞『売れてる本』掲載後は、週売1000~1200冊とほぼ1.5倍になっています。

その後もパブに取り上げられていて、5月31日の『ベストセラー解読』に紹介されました。

重版のロットの拡大ができてから新聞や雑誌への広告も増えています。4月末から5月の広告掲載は左記の通りです。特に5月6日からの全国紙半5段広告3連発は、当社では過去に類を見ない新聞広告だと思います。
4月30日発売の週刊現代、週刊ポスト、5月6日朝日新聞朝刊半5段広告、5月15日毎日新聞半5段、5月18日読売新聞夕刊半5段広告掲載と続きました。

5月の初めごろから取次から話があって、調整をしていたのですが、売上も若干落ち着いてきましたし、ほぼ全国的な仕掛け売りの展開が行き渡っていると判断して、5月20日からSCM銘柄がスタートしました。

6月に入ると安定期に入って、受注は落ち着いてきましたが、売上はある程度キープできているので、今後も根気よく売り伸ばしていきたいと思っています。

きっかけはB書店のオリジナル商品開発の成功でした。埋もれていた作品に再度光を当てて売り伸ばす、リバイバルマーケティングの成功事例と言えると思います。

この作品以来、昔売れていて、今は埋もれてしまっている作品を掘り返す好機になったような気がします。すでに何人かの営業マンが既刊本の仕掛け的な売り方を書店員に提案していますし、これから営業活動の柱の1本にしようと考えています。

修正計画を提出して、38万部にまで伸ばすことができた要因は、Tさんのきつい一言がすべてだと思っています。重版のロットを拡大した社内調整は、Tさんの発言がなければ成し得なかったことです。

そういう意味で影響力が非常に大きかったと想いますし、2万部重版に合わせて一挙に全国展開まで持っていくことができました。その後の重版のロットの拡大のひきがねにもなっています。
また、O氏の『大きな森の小さな密室』の10万部突破は非常に良い影響をもたらしたと思っています。10万部突破が対外的には書店や取次に対する信頼度を上げ、社内的には大きな部数で勝負ができる環境を与えたと考えています。
以上が私の報告です。


10万部計画を成功した出版社は、続けてもう一本10万部突破ができることが多い。営業のスタイルの革新が引き寄せの法則となっているのかもしれない。