2015年9月27日日曜日

半期ごと5本連続10万部越え 1本目

売り伸ばし塾一期生
春がきたとはいえ未だ名ばかり、まだまだ寒さが残る2012年3月初め、神保町のホールでセミナーの講師をした。タイトルは「営業担当者のための書店発ベストセラーの作り方」だった。

出版社の若手営業マンを集めて行ってきた斉藤塾の一期生から三期生まで活動事例を総括し、テキストの中からベストセラーづくりに直結する「売り伸ばしの技術」と「囲い込みの技術」の講義を行った。

塾は半期をスパンとして活動していて、1年半の間に三期続けてベストセラーが途切れず続いて生まれていた。その中にはミリオンセラーが3点もあったし、20万部突破作品もあった。終了後には活動について参加者から多くの質問が寄せられた。

「塾生になるにはどうしたらいいのか」
「私も10万部計画をやってみたい」
中にはこんな風に語る参加者もいたので、何かしらセミナー参加者への受け皿を用意すべきではないかと思えてきた。

彼らにはテキストの内容を講義しているので、売り伸ばしの実践だけを行う塾を始めることを決めた。5月になって、名刺交換をした方々にメールでご案内をしたところ、2名から参加希望の返信があった。

グループワークの良さは2名では発揮しにくいので、他にメンバーを集める方法はないかと考えた。そこで浮かんだのがリベンジという言葉だった。
これまで塾に参加して、見事に玉砕したメンバーが何人かいる。一度であきらめてしまっては何も残らない。彼らにリベンジのチャンスを与えるべきだと考えた。

計画に失敗した塾生に案内を出したところ、リベンジに燃えて参加したいと申し出たメンバーがいた。10万部計画を成功させた塾生の中で、出版社が変わって新たな場所でチャレンジがしたいと参加の意向を示してくれたメンバーもいた。

前年8月に開催された二期生N氏の勉強会で一緒になった書店員がいた。彼は四期生の活動に参加していて、店頭で売り伸ばしを実践する役目を担っていた。
続けて塾に参加したいと申し出てくれたので、新たに発足する売り伸ばし塾に参加してもらうことにした。

計画に取り上げられたタイトル
2012年6月に塾はスタートした。一回目の会合は過去の塾生の活動を紹介しながら、二回目以降の会合のやり方と、10万部計画のストーリーの再確認を行った。そして、次回会合の1週前までに計画書を提出するように伝えられた。

翌月に行われた会合では、提出されたそれぞれの計画書の説明と、計画に対する質疑応答が行われた。提出された宿題は4名とも10万部計画だった。

氏は3月のセミナーに参加していた。講義では売り伸ばしが論理的に行われ、容易にベストセラーが作られているように感じられた。質疑応答の後も会場に残って名刺交換をしたら売り伸ばし塾の案内が来た。

現状の営業スタイルにはマンネリ化があるように感じていたし、何とか営業部そのものを革新できないものかとも考えていた。今までの営業体制から脱却して、自分の手でベストセラーを作れる営業マンに変身したいと思っていた。

売り伸ばし塾に参加することにしたO氏が取り上げたのは、『大きな森の小さな密室』という文庫のミステリー作品だった。

同じくセミナー参加者のY氏は中堅の営業担当で、自社の売れ筋作家の作品の中からビジネス書の『NO1営業力』で計画書を提出した。

三期生の活動に参加して、初版を売りさばくのに汲々として計画を大失敗をしてしまったM氏は、売れ筋の作品を常に提供し続けている著名な翻訳家の作品、『一流の人に学ぶ自分の磨き方』を取り上げた。

三期生で10万部突破を果たしたH氏は、移った先の出版社の作品でも自身の手でベストセラーを作りたいと考えた。そこで、新刊の自己啓発書『TREASURE MAP』で10万部計画を発動して参戦した。

ビジネス書が3点とミステリーの文庫作品という組み合わせで、10万部を超えるベストセラーを作りたいと希望を持って塾はスタートした。

塾の活動は、月1回の会合のたびに進捗状況を報告し合い、質疑応答を繰り返しながら進めていった。

O氏の計画書
O氏が取り上げた『大きな森の小さな密室』は有楽町の書店員さんがこの作品を気に入って、仕掛け販売を実施して成功させていた。その書店員さんが使った拡材を使用して他店に広げてみたら、そこでも好調に売上が推移した。

そこで、この作品をもっと売り伸ばしたいと考え、10万部計画を作成した。
計画書の目的欄には、売り伸ばしのノウハウを培い、コンスタントに5万部、10万部の作品を生みだす販売力を身につけると記入されていた。

計画はⅠから6のステップで組み立てられていた。
1 仕掛け販売の成功事例を元に注文書を作り、仕掛け売り店舗の広がりを作る。
2 拡材、展開写真、購買層、上位店の販売実績、などを明記して、さらにダジャレも入れて親しみやすい注文書を作り書店に流す。
3 上半期自社売上ランキング第1位の帯を作成、さらにランキング第1位を広告にも使用する。
4 有楽町の店のデータと拡材を使って、チェーン本部に営業を展開し、仕掛け店の増加を目指す。
5 広告情報を注文書に掲載して受注を促進させる。
6 定期枠の広告に既刊のこの作品を何とか割り込ませる。

有楽町の店をテストケースと考え、その成功例を注文書で紹介しながら他の書店に広げる。チェーン本部への営業で仕掛け店を増加させ、新聞広告を掲出して全国的な展開を目指す。こうした作戦で10万部越えは可能だとO氏は語っていた。

仕掛け売りの拠点づくりについては、悲喜こもごもの結果が出て明暗を分けていた。発売になったばかりの新刊がY氏とH氏によって、2点取り上げられていた。

仕掛け売りの拠点づくりのためには重点的な配本が重要なのだが、なかなかうまくいかずに苦労をしている様子がうかがえた。
また、まとまった数の受注をいただいても、その店で初速が出ないと、次の手が打ちにくくなってしまう。悩ましい限りだったようだ。

売れていることがわかる注文書づくりは切実な問題らしく、毎回の会合のたびに各人のつくった注文書を見せ合って、意見交換をして工夫を重ねていった。
そんな中で、ダジャレ付きの注文書には何時も全員の注目が集まっていた。

中間報告会
半年後に行われた中間報告会では、計画書を提出した4件のうち、2件が10万部を突破している。計画の成功率は50%だった。

Y氏は自社の売れ筋の作家の作品を取り上げたのだが、初動段階で影響力の強い、初速の良い店を作ることができなかった。仕掛け売りの拠点づくりがうまく機能しないと10万部計画のストーリーは次に進めない。
結果として重版もできずに終息し、残念ながら10万部計画は失敗してしまった。

H氏は、出版社が変わると周囲の目が今までとは違ってきて、営業活動がうまくできず、仕掛け売りの拠点づくりが思い通りにできない現実を味わった。
ボリューム陳列ができた店でも初速が思いのほか取れなくて、拠点が作れず10万部計画は失敗してしまった。

リベンジ組のM氏の取り上げた作品は、売れるか売れないかわからない新刊を取り上げて失敗してしまった前回の反省を生かして、すでに売れている作品を取り上げていた。
発売前のテスト販売の段階から初速が出ていて、これなら売り伸ばせると満を持して10万部計画を提出していた。

途中、8万部を過ぎたあたりで売上が停滞する時期もあったが、関西地区を根拠地としてベストセラーづくりを成功させている10万部メーカーのエリアマーケティングを参考に、マーケティングの練り直しを実施した。

打開策の一番目は阪急電車の車内広告を実施することだった。交通広告と連動した営業活動で関西地区でのエリアマーケティングを強化して、関西を起爆剤に再度仕掛け売りを強化していく方針が採用された。

また滞りがちだった新聞広告は、新刊の定期広告枠の中への割り込むことで再開させることが決まった。
さらに大阪の御堂筋線への電車広告実施、関東では京王線の電車広告への割り込みを実施することも決まった。

こうした積極的な姿勢が売上を回復させ、書店での仕掛け売りの再開も可能にしてくれた。その結果、新たに2万部の重版が決まり、11月の上旬に10万部を突破することができた。

O氏の報告
O氏が所属するのはミステリーやSFが中心の文庫を刊行して、コアなファンが多くいる、知る人ぞ知るというスタンスの出版社です。

今回は有楽町の書店員さんが単行本の時にこの作品を読んで気に入ってくれました。文庫化されるのを、満を持して待っていたかのように、文庫版発売と同時に、独自のPOPを作成して、自店で売り伸ばしをしてくれていました。

2011年10月に発売された『大きな森の小さな密室』は初版1万部でスタートした作品です。書店員の独自のPOPを拡材として使用する許可をいただいて、仕掛け売りの広がりをつくる営業に利用させていただきました。

毎回工夫をして変えているダジャレ付きの注文書が思いの外好評で、その気になって、仕掛け売りをしてくれる書店員がだんだんと増えていきました。

仕掛け売りの店を広げることが売り伸ばしの決め手になると思うので、売ってみたいと思わせる注文書が有効だと考え実行したものでした。また、書店員が気に入って、毎回誰かが注文をくれるからこそ、ダジャレ付き注文書は継続できていました。

読者に対し、よりアピール度の高い帯をつくるため、“続々重版”、“上半期売上第1位”などの新帯を重版の度に作っていきました。

取次の文庫ランキングに登場するようになってからは、チェーン店本部や取次への営業案内を強めていき、チェーン本部からまとまった注文をいただくことができました。

発売後の重版は2千部ペースで推移していたのですが、ダジャレ付き注文書で受注の促進がうまく回り始めた2012年4月からは、重版のロットの拡大が上手くできるようになりました。
4月は8千部、5月1万7千部、6月7千部、7月2万部、9月8千部というように重版を重ねることができ、11月の報告会の時点では累計9万2千部になったと報告ができました。


12月は年間売上第1位帯で訴求し、どの店にも文庫の棚前に積んでもらえるような営業をします。1月には阪急の電車広告が決まり、起爆剤として関西圏で仕掛け売りの再度の構築をする予定になっていますので、10万部突破は充分可能であると考えています。

2015年9月20日日曜日

ミニうり坊 2年目の新人、10万部突破に貢献

実用書をビジネス書の棚で売る
「海・川・プール 出かける前にちょっとスロトレ」
このコピーをパネルにして、ビジネス書のおすすめ本を展開しているスペースの一番上の棚一段を使用して、実用書担当を支援したフェアを実施したことがあります。

期間は2009年6月20日から8月31日までの73日間でした。当初は夏休みに入るまでと考えていたのですが、売上好調につき延長しました。

…もうすぐ夏だ。小さい子がいるサラリーマンは子どもを海に連れていく。山にも川にも行くかもしれない。当然、父親は子どもの前で裸になる機会が多くなるだろう。
おなかが出ているとちょっとかっこ悪い。今のうちにおなかをへこませておきたい。
でもハードな減量作戦はできそうにない。スロトレだったらいいかもしれない。
そう考える人たちはこの店にいっぱい来店しているのではないだろうか。

どの場所で展開したらいいのだろうか。
ターゲットは小さい子供のいるお父さんだよね。彼らがこの店で一番行きそうな場所ってどこだろう。一階の入り口のビジネス書のおすすめ本が並んでいる棚だよね。
だったらそこがいいか。その場所の真ん中の棚の上の段一段使っていいよ。

こんなふうに連想ゲーム的に考えてこの企画は始まりました。

企画のコンセプトは「スロトレでビジネスマンの腹をへこまそう」です。
商品は3点選び、『ストレッチメソッド』を3面、『30秒ドローイング』2面 、隙間に『一日6分痩せる体をつくる』を1面 にして棚一段を埋めました。

ジャンルが配置された場所によって、日の当たらないままに忘れ去られたような売上で推移してしまう商品が多くあります。その店の実用書は恵まれていない場所に置かれていました。

最上階のフロアの商品を一階で販売すると何倍もの売上が取れることはお分かりいただけると思います。あるいは全フロアに商品を置くとどのくらい売れるものなのか想像してみてください。
ましてやメインの客層の客導線上に配置したらどうなるでしょうか。置き場所によって売上は大きく変わっていくものなのです。

棚一段だけ使用したこの企画で、約4ヶ月間かけて300冊以上の販売実績を上げています。
<「企画を成功させる技術」から加筆して引用>

法律系実務書出版社の変身
2012年に「睡眠」をテーマにした実用書がビジネス系出版社から刊行されて、その店のビジネス書の話題の本のコーナーに置いて200冊以上販売しました。

その出版社は法律系の年度版の書籍を多く発行していた出版社でした。
経営状態が苦しく、資格書を出している出版社の発売元になって一息ついたようでしたが、利益を稼ぐのはもっぱら資格系の本ばかりで、庇を貸して母屋を乗っ取られたような状態になっていました。

縁があって「書店発ベストセラーのつくり方」についてのお話をさせていただきました。その場では事例を挙げて「営業の力でベストセラーは作れる」と力説しました。
同席したメンバーからは旧態依然としたスタイルから脱却できない営業部への批判が多く出ていました。

その後、話しを聞いてくれた編集者が新刊を出すことになって、発売元の出版社の営業マンと一緒に店を訪ねてきました。彼は自分の作った作品で書店発ベストセラーを狙いたいと意気込んでいたのですが、二人のやり取りがかみ合わずに苦戦しているということでした。

10万部突破を目指す営業では拠店をつくるためにまとまった数での受注が必要なのですが、その営業マンは自分の要望をはっきり伝えず、相手の言いなりの受注数で満足しているようでした。

店のどの場所で商品を展開したいのか。そこで展開してどれくらい位の売上を取りたいのか。その店の客層と商品がいかにマッチしているか等々、店担当者にアピールすべきなのに積極性が欠けているように感じました。

どの店で強い売上を作りたいのかが明確に意識されていないと、10万部を目指す拠点づくりはできません。再度、書店発ベストセラーづくりのストーリーを説明し、営業のスタイルを変えるように提案しました。

たまたまその作品ではベストセラーをつくることはできませんでしたが、一念発起した営業マンはその後に発売された実用書系の作品で、「ベストセラーを狙って作る営業スタイル」をマスターしたようです。
『あなたの人生を変える睡眠の法則』『目は1分で良くなる!』という作品で、両方とも10万部を超えるベストセラーを作りました。

ビジネスマンの生活シーンを切り取る作品
なぜ実用書をビジネス書の棚で売ったのかと問われれば、気まぐれと答えるしかないのですが、商品の対象客層としてビジネスマンが想定されるとしたら、ビジネスマンが最も集まりやすい場所で売るのが理にかなっていると考えたからに他なりません。

男性ビジネスマンが女性客の多い実用書のゾーンに入っていくのは気が引けるように思うし、ダイエット系の本は女性向けに書かれている作品が多い。その中に男性向けの商品を入れ込んでも男性客は目にすることはできにくいだろうと思います。

ダイエット本は基本的に女性向けの作品が多く、女性向けの実用書の中でも中核をなすジャンルですので、それなりに棚本数も使われています。健康に関する本にしても主に女性客がメインになっています。

メタボ対策本は年配男性が多く必要としています。メタボでなくても、夏になると腹の出具合を気にするビジネスマンが多く出てきます。そんな時に女性客が多い棚にわざわざ出向くのを嫌がる男性客は多いと思います。

男性客の寄り付きが多いビジネス書の中にこうした商品が置いてあると、男性客でも抵抗なくお買い上げできるでしょうし、衝動買いも期待できると思います。そんなふうに考えていたのです。

2014年になると、ビジネス系出版社がビジネスマン向けにタイトルや装丁を工夫して、実用書をビジネス書として販売する傾向が顕著になりました。

かんき出版の『なぜ一流の男の腹は出ていないのか』2014年の3月に出版されて、売れ行きがよく重版を重ねていきました。それに続いたのが『なぜ、一流の人は疲れを翌日に持ち越さないのか』でした。

両方とも内容は健康に関する本であることに変わりはありません。それまでは実用書系の出版社から実用書として出版されたものです。
次いで、『一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?』という本も刊行されて、初速が良かったようです。

こうした作品の売れ行きの良さを認めた出版社が、ビジネス系、実用書系を問わず、「一流の人シリーズ」と言えるような作品を相次いで刊行するようになりました。
一つ一つの生活シーンから自身を変えることで、ビジネスマンとしての成功法則を見つける。そうした考え方を持つと企画はいくつも作れるようです。

ビジネスマンの生活シーンを切り取る作品は、ビジネス書の棚の必需品になったと思えるほど出版点数が増えています。

新人も2年目に突入
新入社員研修で店頭実習を受けていた1年目女子も半年過ぎると正式に配属が決まります。どの店に配属になるのか、本人も気がもめたようですが、正式発表の一週間前にマネージャーから内示があり、そのままその店に配属になりました。

夏の文庫フェア、秋の読書週間などに合わせて自分なりのお客さまにおすすめする作品を選び、テーブル1台使って仕掛け売りに挑戦してきましたが、ヒット作と言えるような実績を作ることはできませんでした。

正月やバレンタインなど、季節に合わせた商品にもチャレンジしましたが、与えられたテーブルの設置場所が階段の踊り場ということもあって、かんばしい実績を作れないまま2年目を迎えてしまいました。

この年は新入社員の採用がありませんでしたので、2年目に突入と言っても後輩はできませんでした。相変わらず店の中では新人扱いをされています。

入社2年目男子は新書ダービーで第一位を取り、10万部を超える作品にすることに貢献しました。また、3年目女子は4年目に入りましたが、文庫ダービーで2度ほど第一位を獲得し、それぞれの作品で単店で1000冊越えを経験しています。

1年目女子はこのまま実績を作れなければ、自分の存在感を認めてもらえませんので、起死回生の一発を当てたいとひそかに考えていました。それでも売れる作品に出合えなければ話になりません。

2年目に突入する頃、ビジネス書売場の中に本来実用書に分類される作品が潜り込んで、ベストテンにランクインするケースをよく目にしました。
ビジネス系の出版社が、これまで実用書を出していた著者を使って、ビジネスマン向けに刊行した作品群です。こうした作品はビジネス書に分類されていますので、実用書担当者としては手が出せません。

ミニうり坊でもテキストによる講義と売り伸ばしの実践が両輪になっています。5月の初めに行われたミニうり坊の講義は「企画を成功させる技術」でした。その中に「海・川・プール 出かける前にちょっとスロトレ」の話しが登場していました。
その日に提出するために用意してきた計画書と販売スタイルがとてもよく似ていました。傍にいた3年目に突入した新書担当も事前に企画の概要を聞いていたのか、思わず笑みがこぼれた表情を見せていました。

2年目新人女子の計画
2年目に突入した新人の売り伸ばし企画に取り上げられた作品は、3月に主婦の友社から刊行された『できる男は超少食』でした。

彼女の取り上げた作品の内容紹介を主婦の友社のホームページから引用します。

オバマ大統領やマイクロソフト創業者ビル・ゲイツは超少食で知られる。日本でも星野リゾートの星野社長、ジャパネットたかたの高田社長、ビートたけし、タモリ、福山雅治などは1日1食。
スポーツ界でもサッカーの小野伸二は1日1食、横綱白鵬は少食、陸上の為末やジャイアンツ球団は定期的に断食するなど、各界で活躍する人に少食実践者が多く、活力の源=大食、という図式は成り立たないことがわかる。
飽食の現代、食ベ過ぎが健康によくないことは皆の知るところだが、さらに少食にすることで眠っている本来の能力が目覚め、「できる男」に!  
メタボ解消はもちろん、頭が冴え、体が軽くなり、集中力アップ、短眠でも疲れない。そして、若返って精力絶倫に。さらにボケない、病気にならない、寿命も伸びる。飲み会や接待、会食が多いビジネスマンでもラクラク実践できる「少食ライフ」のススメ。

最近はやりのビジネスマンの生活シーンを切り取る作品の中で、コンディショニングを整える内容のようです。タイトルを見ると「一流の人」の代わりに「できる男の」というフレーズが使われています。このあたりも彼女を売る気にさせた要因のようです。

この作品は健康・医学に分類されています。実用書系の出版社から発行されると、取次の分類は実用書になることが多いようです。この店でも実用書に分類されて、彼女の活躍できる条件が整いました。

「ビジネス書の柱周りに設置されているおすすめ本用のテーブルを一台使用して、ボリューム陳列をする」と計画書には明記されていました。

「ビジネス書担当の了解は取れているの?」
「これからです」
「時流に乗っているし、この店の特徴もつかんで計画書ができている。何はともあれ、ビジネス書のテーブルが使えるかどうかにかかっているね」
こんな会話の後で計画書は承認されました。

客導線上にボリューム陳列
気持の優しいビジネス書担当の了解が取れて、商品が入荷次第テーブルを1台あけてもらうことになりました。

彼女の注文した商品が6月3日に入荷し、その時点で手元にあった在庫と合わせて100冊弱の仕掛け売りがスタートしました。テーブルには8面積みで展開されて、パネルはA3サイズが使用されました。手書きPOPのコピーは「腹が減っても戦はできる」でした。

周りのメンバーも注目して成り行きを見守っていましたが、入荷日から10日間で10冊超えの売上が記録されると、「微妙だな」という発言が周囲から漏れてきました。ビジネスの仕掛け売りでは週売20以上が目安となります。

「出足としてはいいのではないでしょうか」
ビジネス書の担当者はそんなコメントをしていました。テーブルを返せとは言われずに、仕掛け売りを継続させることができ、彼女は安心した表情を見せました。

次の10日間はほぼ倍の売上となりました。週売ではないし、ビジネス書として考えるとまだ微妙な売上なのですが、周りの皆さんには大目に見てもらって、2年目新人女子の仕掛け売りはさらに継続していきました。

その後も特別に跳ねる売上は作れていない状況は続きましたが、客導線上にボリューム陳列する売り方が効果を発揮して、仕掛け開始後2か月目に累計売上が100冊をクリアしました。

100冊を越えると、出版社の方々の反応が強くなります。販促物として大型のポスターを作成していただきましたし、多くの書店で店の一等地での陳列が始まったようです。店内でも存在感を主張し始め、ビジネス担当もテーブルについては何も言わなくなりました。

3ヶ月目も同じようなペースが続き、4か月目に200冊越えを実現しました。嬉しいことに、交通広告に合わせて入荷した注文品の帯には「10万部突破」という文字が明記されていました。この時点でこの店の売上は出版社の刷り部数の0.2%となりました。

過去のうり坊メンバーは出版社の担当者と協力して10万部突破をめざしていました。「自分もベストセラーづくりに貢献できたらいいな」と考えていた2年目新人女子は、「うり坊の先輩たちと肩を並べることができてとてもうれしい」と言っています。

2015年9月16日水曜日

ミニうり坊 単店で1000冊越えをつくる

ノミネート
10月に開始するおすすめ文庫全店フェアは、候補作品のノミネートが8月末に締め切られます。そして9月の上旬に店の文庫担当者を集めて選定会議が行われます。選定会議に選ばれた作品だけがフェアに参加できる仕組みです。

3年目若手女子にも店文庫担当者として選定会議に参加するよう連絡がありました。事前に候補作品のリストが作成され、推薦者の名前も記入してあります。最盛期には100点近くの候補作品が揃いましたが、現状はそこまで多くはありません。

出版社担当者との連携を取った店の文庫担当者にもそれぞれの思惑があり、選定会議では思いのたけをどれだけ伝えられるかが勝敗を分けるようです。出版社推薦と店担当者推薦が重なると選ばれる可能性が高まるとも聞いています。

そうしたことは今では企画に参加しようとする誰もが知っていることですので、1位を狙おうとする出版社は事前に店担当者にアプローチしています。それなりに影響力を持つ店の文庫担当者として、3年目女子にも何社かからアプローチがありました。

候補作品リストを見て、今年はどんな作品が選ばれ、どのようなレースになるのか、店の文庫担当者たちは仲間内で予想もしています。そんな中で、自分のおすすめ作品で第一位を取りたいと、どの店の担当者も考えています。

6月に行われた新書ダービーでは、2年目男子のイチオシ作品が第一位を獲得しています。仲間として普段は助け合って仕事をしていますが、こうした立場に立たされると、ライバル意識が芽生えています。

「自分も第一位を取りたい」
ミニうり坊で切磋琢磨している仲間に、これ以上実績で離されたくはありません。

自分のおすすめ作品は自店の売上が突出して高くなっていて、他の店での実績があまり出ていません。各店の文庫担当者もそれぞれに思惑があるでしょうから、選定会議でどのように反応するか不明な部分もありました。

最終的に出版社担当者との重複推薦があったこと、大手出版社の推薦作品であったこと、自分も積極的に発言したこと、売れそうな雰囲気を作れたことなどから、3年目女子のおすすめ作品は全店フェアに参加することができました。

当店のイチオシ
9月下旬におすすめ文庫全店フェアの作品が入荷してきました。文庫売場の導入部分にあるフェア台に商品を並べました。パネルは本部から送られてきたものを使用し、作品紹介の小冊子を置いて、手書きPOPを商品ごとにつけて準備が完了します。

フェアに参加する作品は全点各30冊入荷してきました。入口壁面の販売ステージを使って見本的な展示をし、メインはフェア台で販売します。ダービー出走作品は1冊1冊を見るとそれなりに売れそうな感じがしてきます。

ダービー出走作品の中から「当店担当者のイチオシ」として1作品を選び、その作品を目立たせるようにして陳列します。何時からこのようなスタイルがこの店で主流になったのかはわかりませんが、当店担当者のイチオシと明記した作品は良く売れます。

イチオシ作品を何にするか選ぶことはそれなりに難しいものです。出版社担当者からのアプローチは沢山あって、中には強引にすすめていく営業さんもいます。
それでも、店の担当者として押す作品は、様々な思惑を排除しながら、担当者自身の責任において選ぶことになります。

『鬼畜の家』はフェア開始前までに200冊以上売れています。出版社担当者におすすめされてスタートした2店舗以外は、チェーン店内ではどこも手を出していませんでしたので、この店の販売数は突出していました。

「当店のイチオシを選ぶなら、やはりこの作品しかないだろうな」
そのような気分を後押しするように出版社からも強い押しがありました。3年目女子は出版社担当者に頼んで200冊を手配し「当店担当者のイチオシ作品」として『鬼畜の家』を強力プッシュすることにました。

全店フェアは静かにスタートしました。同程度に売り伸ばしている作品が多くありましたし、彼女のイチオシ作品も同じような数字で推移していました。そこに、出版社担当者と打ち合わせた200冊が入荷しました。

その200冊で2か所にボリューム陳列を作り、フェアコーナーにも多めに作品を並べました。その結果、それ以降の売れ行きがガラッと変わっていきました。
『鬼畜の家』はそれまでの売れ行きのほぼ3倍以上の数字が取れています。


第一位
6月以来、店の入り口はそれまでとはイメージが変わり、ジャンルを特定しないおすすめ本のボリューム展開のゾーンになりました。

入口のボリューム陳列を見ると、
「なんでこの作品がこんなに大量に積んであるの?」
お客さまに疑問を抱かせます。

店の中に入っていってすぐにあるベストテンコーナーにも並んでいるのをチラ見すると、
「売れている作品」
というイメージが頭に残ります。

通路に沿って進んでいくと店の中のおすすめ本コーナーのブロックに突き当たります。そのボリューム陳列を見ると、つい、手に取ってしまうお客さまが多くいらっしゃいます。

「文庫本ならそれほど高くはないし、買ってみようかな」
お客さまのなかにそういう思いが湧くようになると、大成功です。

「2度見、3度見でその気にさせる作戦」
誰が名づけたのかわかりませんが、この作戦は売上を大きく伸ばす売り方として定着しました。

10月の全店フェアでは、『鬼畜の家』は週売40冊以上が連続していきました。
週売40以上というのは、突出した売上の商品がなければその店の週間ベストの第一位を確保できる数字です。

影響力のある店でこうした売上を作れると、出版社の営業担当も張り切って店を回るようになります。データに裏付けされた積極的な営業は、追随して仕掛け始めようとする各店担当者を後押しします。

ダービーで第一位を獲得するための決め手は「店内第一位の店をどれだけ多く獲得するか」にかかっています。店を回って自社の作品を競合作品に比べてより売れやすい状態をつくることが営業担当の重要な仕事です。

出版社営業マンが「店を回ると売上を上げる魔術」を持っていると、比較的容易に一位にすることができるものです。今回はこの店の突出した売上が良い影響を与えて、ダービーの第一位を断トツの実績で獲得できました。

1000冊越え

10月の全店フェアで「当店担当者のイチオシ」がうまく作用して、『鬼畜の家』は週売40ペースを安定してキープし、月間で180冊程度の実績を作りました。

11月は拡販キャンペーンの準備期間となりますので、全店的には商品の動きは小康状態になります。3年目女子は自店での売り伸ばしのために第一位を獲得したわけですので、売れ行きに合わせてその後も追加注文をしていました。
商品展開を変えず、ボリューム感を維持したお蔭で、ダービー期間の販売数の約8割の状態を維持していました。

そうこうしているうちに11月も月末を迎えるころ、年末商品の仕入れにてんてこ舞いの中、拡販キャンペーン用に250冊が入荷しました。

「えっ、250冊?」
「まさか?」
「そんなに少ないの?」
ミニうり坊のメンバーも500冊は必要だと言っていましたので、そんな驚きの言葉が出てくるような展開になりました。

ミニうり坊のメンバーは次の全店フェアの第一位が決まるまでが拡販期間だと考えていますので、2か月間だけで拡販を終了させるつもりはありません。

普通は予定されている2か月の拡販キャンペーン期間だけしか考えていないようです。そこでの仕上がり率を考えて仕入をセーブするようでは売り伸ばしにはなりません。そのあたりに第一位作品の拡販に対する考え方の根本的な違いがあるようです。

必要な部数を確保するために店長も参加して様々な手口を探り、ようやく追加の部数のめどが立ち、ほっとしたのですが、実際に商品が入荷してきたのは12月10日になってからでした。

12月1日にキャンペーンはスタートしましたが、最初の1週間はそれまでとあまり変わらない売上で終始しました。それでも追加注文が入荷してボリューム感をアップさせたあたりからは狙っていた週売50以上のペースに持ち込むことができました。

キャンペーン期間中の2ヶ月間で400冊以上販売し、3ヶ月目には600冊近くまで実績を伸ばしました。ここまでで発売以来の累計売上が1000冊を超え、3年目女子はミニうり坊の自主目標達成第1号となりました。

連続して1000冊越えをねらう
3月は雑学文庫ダービーです。前年のおすすめ文庫全店フェアで第一位を獲得して、念願の1000冊越えを記録した3年目女子は、次の企画でも同じスタイルで1000冊越えを狙うつもりでいました。

今回は雑学系文庫が対象です。これまでこの店では雑学系の文庫を大量に販売した経験がありません。どちらかというと小説系の方が強い店として考えていましたし、中でもミステリー系はとても強いと自分でも意識していました。

出版者担当者との事前の打ち合わせもあまりしませんでした。選定会議で選ばれたラインナップの中から、自分で気に入った作品を当店担当者のイチオシとして売り伸ばすことを考えていました。

2月の中旬にダービー出走作品の中から自店のイチオシ作品を決めることになり、ミニうり坊のメンバーと相談しました。メンバーの意見は店の状況に合わせて売れそうな作品はビジネス系の作品だろうと言う意見で一致しました。

「この店には20台後半から30代にかけての、上昇志向が強いビジネスマンが多く生息している」
そう発言したのは新書担当でした。彼もこれまで新書の様々な仕掛けにチャレンジしてきましたが、20代から30代のビジネスマンが動いてくれる作品は売上が跳ねると言っています。

ダービー出走作品の中にベビジネスマン向きの作品がありました。しかもこの店の売れ筋商品に当たる「話し方」と「プレゼン」がミックスしてテーマになっている作品です。

この店の周辺に生息するビジネスマンは会社の中で頑張って出世するより、会社を辞めて独立して会社を興す傾向が強いと言われています。

マーケティングや広告などの分野がよく売れていますし、若手のビジネスマンはプレゼン能力を高めることが必要なことだと考えているようです。この作品が一番店の客層に合っているだろうと思いました。

「どこかで見たことがある作品だな。以前雑学ダービーで2位になっている作品だよ」
ミニうり坊で指摘されました。

2度目の1000冊越え
雑学ダービーでイチオシにしようとした作品は2009年にB店で新記録を作った作品でした。奥付を見ると確かに2008年初版発行と書いてあります。

どういう経緯でこの作品が出走作品に選ばれたのかはわかりませんが、「会議で選ばれたのですから売るだけ」3年目女子はそう考えました。

「同じビジネス街の店で売れているし、テーマ的にこの店にも合っているように思う。この作品を押すしかないな」
ミニうり坊のメンバーに話すと、売りましょうというと言う言葉が返ってきました。

「当店のイチオシとして売るので、200冊手配してください」
出版社の営業担当に電話してそういうと、すぐに手配しますと言って、直送の手配をしてくれました。

数日後、商品が入荷しましたので、店の入り口と文庫のおすすめ本コーナーの2か所に大きくボリューム陳列を作りました。すると、すぐにお客さまの反応が変わり、週売50冊を超える実績となりました。

20代の後半から30代の前半のお客さまが手に取っている姿をよく見かけました。データを調べると、男性のビジネスマンが多いのですが、同じ年代の女性もお買上してくれているようです。

翌週は週売70を超える実績がでました。新書ダービーでもこの数字は出せませんでしたので、すぐに追加注文をして商品のボリュームの維持をしました。店の中心客層に合う作品は途方もない実績を作ります。

ここまで強い売上が作れると、もはやダービーでは追いかけてくる作品もなく、独走状態になってしまいます。若手のビジネスマンが多く来店する店では、追随してイチオシにする担当者が出てきて、ダントツの一位で雑学ダービーを制しました。

その後も売上が止まることはなく、拡販キャンペーンでも強い売上を作り続け、4年目に突入した文庫担当女子は2本目の1000冊越えを雑学系の文庫で成功させました。


2015年9月13日日曜日

ミニうり坊

教えたがり
異動した店にようやく慣れたころ、人事異動がありました。店長と数人のジャンル担当者が入れ替わり、4月を過ぎると新入社員が仮配属になりました。入社時教育の一環としての店頭実習を約半年間行うと言っています。

するとその店に入社1年目から3年目までの若手社員が3名揃いました。女子2名と男子1名です。若手社員が複数集まると、うり坊と関わってきたこれまでの記憶がよみがえり、教えたがりの血が騒ぎます。

書店員として30年以上の歳月を積み重ねてきましたが、自分自身は先輩から仕事を教えてもらったという記憶はありません。当時は、「自分の背中を見て覚えろ」というのがほとんどの人の考え方でしたので、先輩の仕事の仕方を自分から盗むようにしました。

最初の書店に入社して5年後には管理職なっていました。ジャンル担当としての経験は正味4年しかありませんでした。残りの30年間は管理職として人を教える立場になりました。

管理職として新人を受け入れる側の立場になると、初期教育を毎年繰り返す日々が続きました。当時は新規出店が盛んに行われましたので、新人が計算できる戦力に育つと、新規店に異動していくことが繰り返されました。

管理職としての自分の仕事のテーマは「いかに早く新人を戦力化するか」に変わっていったのです。

新規店に異動した若手がまた数年後に自分の店の中核メンバーとして戻ってくると、ただ促成栽培を繰り返すだけでは、彼らにとって良いことばかりではないと気づきました。

基本知識を教えるだけでなく、複数の店を経験させながら新人を一人前のジャンル担当者に育てることも必要だと考えるようになりました。ジョブローテーションを意識した育成計画を作ったこともありました。

50歳を過ぎて新しい会社に移り、うり坊メンバーと触れ合った時には、彼らにちょっかいを出すことがとても楽しいことに感じられました。同じ店に若手社員が3人もいると、売りたがりの血が騒ぐ理由はそんなところにも潜んでいます。
新人の仮配属の間の半年間をミニうり坊として活動しようと思い立ちました。

ミニうり坊
入社2年目男子は雑誌と新書と語学書を担当しています。3年目女子は文庫の担当です。新人は担当を持ちませんので、若手二人について彼らをサポートしながら、仕事の基本を覚えるような役割になっていました。

データチェックのために事務所の机に座っている時や、ちょっとしたすきま時間を使って何気なく若手社員に話しかけました。商品の並べ方の原則、おすすめしたい作品を目立たせる陳列の方法など、うり坊での経験談を少しずつ若手に伝えていきました。

うり坊が機能しなくなってからずいぶん時間が経過しています。仕事の基本を系統立てて教えてもらう機会はなくなってしまっているようです。書店員向けのテキストを改定しながら読ませてみるとそのように感じました。

新人に売り伸ばしの技術を身につけさせるには、実際に売ってみることが一番重要なことです。

「仮配属の期間中に、お客さまにおすすめしたい作品を自分で選び、商品の展開場所を決めて、実際に仕入れて売ってみよう。失敗しても構わないし、若手にとっては経験することが上達の基本だから」

そんな風に話しをすると新人もその気になってきました。

その気になっておすすめ本を売りを始めても、すぐに成功することはめったにありません。何度かチャレンジしていく中で一つでもミニヒットを作れれば、それを突破口にして技術を身につけることができます。

自分の好きな作品をただすすめればいいのか
誰に向かっておすすめしたいのか
どの客層をターゲットにするかによって陳列場所も変わるはず
店の特性に合わせた作品を選ぶと反響が出やすいかも
POPは基本通りに書けていますか
こころに響くコピーが書けていますか

新人への声掛けの言葉は限りなく出てきます。先輩からヒントをもらいながら何度か試行錯誤をして失敗体験を積み上げ、それを糧にしていくと進むべき方向が見えてくるはずです。方向性が見えてくるとそれが本人の自信になります。

ステージを整える
入り口、おすすめ本コーナー、新刊コーナーなど、その店にはおすすめ本を展開できるステージが何か所かあります。その店ではそれぞれの場所の性格付けが明快性に欠けていて、見た目にはただ商品が並んでいるだけという印象を与えていました。

ただ商品が並んでいるだけでは、お客さまに何をおすすめしているのかわかりにくいものです。こうした状態では目立った売上を作ることは難しいものです。店長からも入口の活性化をしたいという要望が出ていました。

若手社員が売り伸ばしの技術を身につけるには条件がよくないように感じましたので、売り伸ばしがしやすいように、ステージの性格付けを明快にしていくことにしました。

商品は所定の位置に正しく置いていくことが基本です。目的買いの方向けにはそれでいいのですが、単調な陳列状態ばかりだと、買う商品を決めずにふらっと来店するお客さまは素通りしてしまうことが多いようです。

両方のお客さまにインパクトのある陳列をするには組み合わせが重要なのです。組み合わせが上手くハマると、目的買いの方にも、衝動買いをなさる方にも満足していただける陳列ができるようになります。

ボリューム陳列のブロックをどのスペースで作ったらいいのか、
今売れている話題性の高い商品をどのように展開するのか、
新刊をどのように並べるのか
おすすめ作品はどこに置くべきか

メンバーと協力して、スペースごとに置くべき商品が陳列しやすいような土台をつくり、それぞれのステージに作品をはめ込み、陳列を手直していきました。

何を売りたいのか目で見てわかる状態をつくることを目標に、パネルやPOPの使い方も含め、お客さまへの訴求力を高める陳列を若手社員と一緒に作っていきました。新人は一緒に行うことによって陳列技術をマスターできるはずです。

新刊はステージを通常の棚とは離れたスペースにコーナーを作り、基本は1面ずつ並べ、売れ筋作品は2面から4面で陳列する。目玉商品はおすすめ本のコーナーに8面積みで展開し、2か所展開を基本にしました。

新しいスタイルの確立
若手女子対ベテラン男性の対決を仕組み、ボリューム陳列7連発によって、店として新たに拡販用のステージを確保しました。鮮度の良い作品で回しながら維持させていく必要があります。

7作品を常に売れている作品で回していくことは大変なことです。そこで、店長を中心に社員全員が協議をして、そのゾーンで取り上げる作品の予定表を作成し、スケジュールを管理していくことになりました。

売場内のおすすめ本コーナーはビジネス用、文庫新書用、ノンジャンル用の3か所がありました。それに入口のおすすめ本コーナーが加わり、合計4か所で20作品程度のおすすめ本の展開が常時可能になりました。

店としての重点商品に取り上げられると、文庫新書では週売40以上、単行本では週売20~30を目標に設定し、100冊から200冊レベルの商品量で、入口と売場内のおすすめ本コーナーでの陳列が行われます。

ベストテンコーナーは文芸用、文庫用、ビジネス書用の3本用意してあり、単行本だと3面、文庫新書だと4面陳列できますし、その場所から販売できるようにしています。
それぞれのジャンルで週間ベストテンにランクインすると、おすすめ本の仕掛け売りは3~4か所展開に拡大します。

このようなかたちで、おすすめ本の仕掛け売りのスタイルが確立したことで、おすすめ本の販売数がそれ以前に比べてとても大きくなりました。

入口の活性化対策として、若手女子対ベテラン男性営業マンの対決を行い、ビジネス担当と入社2年目若手男子のおすすめ作品が大活躍をしました。

特に2年目女子営業担当と新書担当が協力タッグを組んでおすすめした作品は、全店企画の新書ダービーで第一位を獲得してさらに売り伸ばしましたので、次は自分たちの番だと文庫担当の3年目女子が言っています。

年間5回のダービーが行われます。ダービー出走作品の中からこの店のイチオシ作品を選び、仕掛け売りをして第一位を獲得させることができれば、自店で1000冊以上の実績を作ることは比較的容易になります。

1000冊越えを目指すということ
十数年前に10か月かけて単品で1000冊後をしたことがありました。単行本で1500円ぐらいの値段だったように思いますが、同時期に出版社では100万部を突破したと聞きました。

ひとつの作品で、1店舗で刷り部数の0.1%を占めたということに非常に驚き、成功体験を積んだという意識が芽生えて、これをこれからも継続して、目標として狙っていきたいと考えたことがあります。

時代は変わって文房具担当者が新規店の文庫担当になるという話しを聞いた時に、仕入部のスタッフとしてその新規店の品揃えに関するサポートをしろと指示を受けたことがあります。

その店の販売実績はとても厳しい状況でしたので、メンバーのモチベーションを上げる方法として、「単品でチェーン店内第一位の作品を作ろう」という目標を掲げて仕事をしていくことにしました。

仕掛け売りを基本ベースにした店の入り口での商品展開によって、店全体の売上は厳しくても、単品では勝負できます。だから、目標として掲げるには適当だと判断してみんなに話しました。

その結果、目標を見失いがちな状況から、「できることは確実に実行していこう」という意識を持たせることができ、目の前の目標をクリアしていくと、何件ものチェーン店内第一位の作品を作り出すことに成功しました。

そういう条件の店で初めて文房具の担当から文庫担当になるメンバーをサポートすることのなり、大きな目標を掲げることが必要だと考えました。そこで、「単店で1000冊越えを年間に3本つくる」を目標にしました。

日々の仕事の仕方から仕掛け売りの技術までを一つひとつ伝授していくとこうした目標もクリアできるようになり、彼が在籍した3年間の間は毎年3件以上の1000冊越え作品を作ってくれました。

ミニうり坊のメンバーにその経験談を話すと、自分たちの目標として掲げていきたいと言ってきました。

入社3年目女子の挑戦
「この作品で仕掛け売りをしませんか?」
出版社の営業担当が入社3年目女子の文庫担当に、発売して2カ月経った作品を提案してきました。

「チェーン店内の主要な2店舗で同時に仕掛け売りをお願いしたいと考えています。すでに沿線の中核駅の店で了解をいただいています」
そのように声高に話す営業担当からやる気と熱意が感じられました。

「おとうさんはおかあさんが殺しました。おねえさんもおかあさんが殺しました。おにいさんはおかあさんと死にました。わたしはおかあさんに殺されるところでした……」
保険金目当てで家族に手をかけてゆく母親。 巧妙な殺人計画、殺人教唆、資産の収奪……
信じがたい「鬼畜の家」の実体が、唯一生き残った末娘の口から明らかに。
本格ミステリ大賞候補作 『衣更月家の一族』、『殺意の記憶』と続いていく榊原シリーズ第一作。

ホームページの作品紹介の文章はとても刺激的で興味深いものです。

保険金殺人を題材にした作品で、女性作家が書いています。どちらかというと女性に受けるイヤミス系の系譜に属す作品でしょうか。
殺人事件が多く出てくる作品やドロドロ系のミステリーはこの店では割りとよく売れていますので、「もしかしたらいけるかもしれない」という感覚が湧いてきました。

6月の中旬に入荷して、文庫のおすすめ本コーナーで15面展開を始めたところ、6月末までの約2週間で、50%以上の消化率が出ました。
7月に入るとさらに調子を上げています。7月20日には同時に仕掛けた店から過剰在庫となっている100冊を回収して販売しています。

入り口のステージを使ったおすすめ本の展開で、新書ダービーの第一位を獲得した新書担当を見ていました。10月にはおすすめ文庫全店フェアがあります。「今度は自分が活躍する番だ」と入社3年目女子の文庫担当は考えていました。

仕組みを利用した売り伸ばしは、先ずは候補作品のノミネートから始まります。自店でそれなりに売れている作品で、出版社担当者との協力体制が組める作品が望ましいのですが、『鬼畜の家』は見事にハマりそうです。

2015年9月10日木曜日

店の顔を作り直す

入口の活性化対策
入口は店の顔の部分に当たります。
だから、そこに置く商品は本来厳選したものであるべきです。入口に置いてある商品を見れば、その店のエッセンスを感じ取れるようにするのが望ましい姿だと思います。

お客さまへの店への印象付けは、ほぼ入口で決まるものだと思って間違いないでしょう。だから、これから入っていく店内にはどのような商品が置かれているのか、楽しみに思っていただけるようなイメージが必要なのです。

店の一等地であるわけですから、良く売れるスペースのはずです。確かに、バーゲン商品を並べると売上は作れるのでしょうが、店としての印象を安っぽく感じさせてしまいかねません。

「入口の活性化をしたいのですが、アイデアはありませんか」
店長から相談を受けて、店の若手社員の協力を得て、入口の印象を一変させるような店の顔を作り直す仕事をしたことがありました。

もちろんうり坊の基本は出版社の力を借りることですから、出版社の方々を巻き込んだ活動にしました。折よく、出版社のエリア担当者にもバリバリの若手が何人かいましたので、彼ら巻き込んでいくことにしました。

店内の商品の並べ方を変えるておすすめ本コーナーが活性化でききましたし、文庫新書やビジネスの仕掛け売りで大きな売上を作ることにも成功していました。店の入り口でも同じような形をつくることができるのではないかと考えました。

入口に置く商品はジャンルを特定せず、複数のジャンルから選びました。店内にどのような商品が置いてあるの推測でき、ショーウインドウ効果をもたらすようなイメージを狙いました。

バーゲンブックを展開していた大型ワゴンを外し、小ぶりなテーブルを何台か置いて1台に1作品を基本に、複数のテーブルに店としてのおすすめする作品を並べる。何をおすすめしたいのか明快に伝わるイメージを作ろうとしました。

ただ、一日で一気に何台ものテーブルを使っての展開はすぐにはできませんでした。出版社の営業マンと若手社員たちの協力で、順次作品を埋めていきました。

一番手は1年目営業女子
最初に展開をした作品は『パソコンの裏ワザ基本ワザ大全』でした。
この作品は「できる大人の大全シリーズ」の新刊で、1年目営業女子が私を名指しで訪ねてきて、一等地を使った仕掛け売りをしてほしいと依頼をしてきたものです。

「若手社員の売りたい気持ちを刺激しながら販売ステージの性格付けを明快にする」と言っておきながら、若い女性に名指しで営業されると、つい大きな部数を申し込んでしまいましたので、一番目の作品は1年目女子と自分のおすすめでスタートしました。

このシリーズは既刊のベストセラーの数冊分のネタを集めて決定版として再登場させる、いわばリサイクル本です。シリーズ共通で厚さ34センチの本にしています。それでいながら、わずか1050円のオトクな値段設定なのです。

2012年刊行の第1弾『できる大人のモノの言い方大全』2013年上半期総合ベストセラーの第5位に入りました。その後発売された作品を含め、シリーズ累計では100万部を超えていました。
最盛期には大きな部数で一等地での展開をして、100冊単位の注文を繰り返した記憶が残っています。

今回の作品はパソコンがらみの内容でしたが、IT系の専門家向けではなく、一般のビジネスマン向けに、ビジネスノウハウとして販売したら売れるだろうというイメージが湧いてきました。そんなことから、最初から強気な部数で注文をした訳なのです。

5月28日に注文通りの100冊が入荷しました。早速、入口にテーブルを設置し、1点で1台を占拠するスタイルでのボリューム陳列を作りました。

3列、横4列の12面積みでしたが、1冊で4センチ近くの厚みがありましたので、抜群のボリューム感を持たせることができました。店の入り口にパソコンの基本ワザの本がうずたかく積まれているのを見ると誰もが不思議に思うはずです。

大きなパネルと手書きPOPをつけて目立つような陳列をしてお客さまにアピールしました。商品展開を始めてから5日間の売上でその週の週間ベストの1位にランクインしました。その後もよく売れて、週間ベストの常連になり、好調に売上は推移していきました。一番手は大成功です。

二番手は2年目営業女子
次に展開したのは入社2年目女子おすすめの『脳には妙なクセがある』です。
店の新書担当と話し込んで、6月開催の新書ダービーに重複推薦でノミネートし、選定会議で選ばれて出走した作品です。

彼女が店に営業に来た時に、ビジネス書の販売ステージでは『覚悟の磨き方』が、タワー陳列を含めて大きな展開をしていました。

「どうしたらこんなふうに陳列してもらえるのでしょうか」
そんな素朴な質問をしてきましたので、この店での仕掛け売りの基本的な考え方、どの程度の売上を目標としているのかを説明しました。

その時の彼女のおすすめ作品は『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』という長いタイトルの作品でした。
それなりに売れていましたし、何回か注文を繰り返していましたので、いい場所にちょっと強めに商品を展開したら、トントンと売れていきました。

「これくらい売れるんなら、タワー組んであげるよ」
実際にビジネス書の販売ステージを使って、大きな展開で仕掛け売りをしてあげました。

それ以来、定期的に営業にやってきて、若手社員たちとも仲良くなっていきました。新書大賞にノミネートしたいと言い出した時も、店の入社2年目の男子がそれに反応して、二人で作品を押す重複推薦になった経緯がありました。

彼らに「仕組みを使って売り伸ばす方法」を話すと二人ともその気になっていきました。二人は200冊展開で一気に売上を作り全店一位に押し上げたいと言い、「店の入り口を使わせてください」と言ってきたのです。

注文した200冊は69日に入荷しました。新書ダービー開始から1週間以上経過していました。

入口では小さめのテーブルを2台つなげて変則的な陳列をし、新書ダービーに隣接したステージでも大きな展開をして、2か所でのおすすめ本の展開が始まりました。
その週から週売40以上の実績が作れて、それが4週続きました。1か月間の新書ダービーではこの店の売上が牽引して全店で第一位を獲得しました。
 
入口と店内での2か所でのボリューム陳列、ダービーコーナーでの展開、それぞれの場所でのPOPの使い方等々。自分のおすすめ本でのこうした展開は初めてのようでしたが、努力した甲斐があってとびっきりの成果を得ることができたようです。

三番手も入社2年目女子
第三弾のおすすめ作品は『なんでも英語で言ってみる』でした。
元々は語学書売場でテープを流しながら販売していた作品で、それなりに売れているのになかなか商品確保ができなくて、語学書担当はいつもボリューム感が作れないことを嘆いていました。

「商品をもっと手配できれば、もっと売れるのに」
入社2年目女子の営業担当者も同じように考えていましたが、社内での部数確保ができなくてちょっとへこんでいました。

重版のロットを大きくしない傾向がある出版社ですので、特に売れている作品は営業マン達の奪い合いになることがあります。そうなると若手は部数確保は難しく、仕掛け売りをして強い実績が作れても長続きできないことがありました。

『こころのふしぎなぜどうして』という作品で塾生が10万部計画を実施して、50万部以上の実績を作った際に、初期の拠点づくりからベストセラーづくりに至る過程で積極的に協力した縁がありました。

塾生だったメンバーやその上司に自分の名前を言えば、必ず商品は確保できるという確信がありましたので、二人にそのことを伝えました。
同時に、店頭の一等地でボリューム陳列すること、テープを必ず流すというふたつの条件を申し入れて交渉してもらいました。

注文した商品は6月11日に減数なしの150冊が入荷しました。ちょうどその日は語学書の担当者が休みだったので、すぐやる課の自分が朝のうちに場所を作り商品を並べ、パネルやPOPをつけて陳列しました。

用意できたのは比較的大きなテーブルでした。その1台を使ってボリューム陳列をしましたが、縦3列横6列並びましたので、18面積みの大きな展開になりました。本の厚さもけっこうありましたので、ボリューム感満点になりました。

パネルや手書きPOPをつけて訴求力を高め、レコーダーを置いてテープを流し始めたら、週売20超えが作れました。売上は好調に推移して、150冊の仕入では足りなくなってしまいました。

四、五番手はベテラン男性
ちょうどその頃、ビジネス系の出版社から仕掛け売りの相談があり、
「交通広告をするので、店頭のいい位置で大きな展開をしたい」
という申し出がありました。しかも2社から同じ時期に受けました。

交通広告もそれなりに費用が掛かりますので、売上を上げないとペイできない仕組みになっていますので、彼らも真剣です。広告と店頭での商品展開がリンクすると、売上が跳ね上がることがよくあります。

交通広告は一過性のものですが、店頭での仕掛け売りの展開はそれなりに長く継続させることができます。店頭での仕掛け売りの応援を交通広告がしてくれるような関係性が売上を作ってくれるのです。

2社ともかつてビジネスダービーに参加していましたし、むげに断ることもできませんので、両作品とも200冊規模での仕掛け売りをすることになりました。

彼らのおすすめ作品は下記の2点です。
『頭のいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか』
『脳の強化書』

店の入り口にテーブルを並べるゾーンの壁側に、従来からある販売ステージがあります。この場所でかつては書店発ベストセラーのきっかけになる売上を作ったことがありました。そのスペースを使って、この2作品を陳列することになりました。

図らずも入社2年目以内の若手女子のおすすめ本と、同じゾーンで対決するような形で商品の展開がスタートしましたので、
「若手女子対ベテラン営業マンの対決を仕組む」
というタイトルをつけて入口の活性化対策の柱にするようになりました。

両作品はともに200冊規模で入荷し、壁面側のステージを使用して、左右に分けて面陳と平台の両方で商品を展開しました。どちらも期間中に大型広告を予定していますので、交通広告に使用するポスターをパネルとして使い、POPも付けて賑やかしにしました。
 
壁面は入口に入ってから目に入る条件でしたし、2作品を分割して陳列していましたので、パネルとPOPの使い方が難しく、ちょっと散漫になったきらいがありました。

六、七番手は若手女子
若手女子対ベテラン営業マンの対決を仕組む最終兵器は若手女子と新書担当がタッグを組んだのおすすめ作品でした。出版社の新書担当の若手女子が10万部計画に取り上げた作品も、その月の新刊も売上が大いに見込めると言ってていました。

店頭の活性化対策としてこの2作品を取り上げる
テーブル11冊品で大きく展開する
塾生の10万部計画を支援する

店の新書担当はこうした大義名分を持ち出して話し込み、商品を出荷してくれるように働きかけました。
「そこまで言われたら出さざるを得ません」
そう言いながら出版社の若手女子が出荷の手配を済ませてくれました。

彼らのおすすめ作品は2点です。
6月18日に『だから日本はズレている』が150冊、『自分の壁』が200冊入荷してきました。

朝便での入荷でしたが、今回は店の新書担当が早番で出社していましたので、二人で協力して陳列を完成させました。

こうして予定していた7作品が揃いましたので、一つひとつの商品のボリューム感を調整しながら、テーブル配置を一部変更して、それぞれの作品の主張がお客さまに伝わるように意識して陳列し直しました。

既刊の『だから日本はズレている』は縦3列横3列の9面、新刊の『自分の壁』は縦3列横4列の12面にして陳列しました。              

どちらも売れ筋商品でしたので期待値はとても高いものがあります。一つのテーブルに二つの商品を並べるのはある意味邪道ですので、売上が取れるのか心配しましたが、両作品とも売れ筋作品でしたのでそれなりに実績を上げることができました。

これで7作品が揃い、入り口活性化対策の商品展開が完了しました。これまでは雑然として何を強調しているのかわからないスペースでした。ボリューム陳列7連発によって、店の担当者のおすすめ本ゾーンとして認知されるようになりました。

途中経過
ボリューム陳列+パネル+手書きPOP。
これが長年の経験で培ってきた店の一等地で大きな売上を稼ぐ必須アイテムです。パネルも手書きPOPも、営業マンと店の担当者の協力でつつがなく準備ができて、売れる状況を作ることができています。

ボリューム陳列7連発を作ったことで店の入り口のイメージがそれまでと一変しました。店の担当者のおすすめ作品の大展開となりましたので、その場所の性格付けが明快になりました。
その場所で手に取らなくても、入口でちら見したことが、店内の商品への波及効果を持つことを期待します。

『パソコンの裏ワザ・基本ワザ大全』は初速が良く出ていました。しかし、追加注文の入り具合が悪くて、在庫が40冊台にまで減ってしまいました。在庫が減るとやはり売上はダウンしてしまいます。ちょっと嫌な状況になってきました。

『脳には妙なクセがある』は6月9日に商品展開をスタートして、6月15日までの1週間に、目標としていた週売40冊を超えることができました。その後も順調に売上が推移して、週売50冊超えもでています。

特定の店で週売40以上を4~5週間キープし、そのデータを使った営業で他店への仕掛け売りの広がりができると、ベストセラー街道まっしぐらとすることができます。
若手女子はこの作品で10万部計画を実行すると言っています。この店の販売実績を基にできると、他の書店への営業が楽にできるようになります。成功してほしいものです。

『何でも英語で言ってみる』は6月11日からの商品展開です。安定して週売20を超えて推移して、若手営業女子は何時も元気でニコニコしながら店にやってきます。
新刊の『自分の壁』『だから日本はズレている』も好調な立ち上がりを見せていますが、新刊の方がさすがに動きが良いようです。
出版社の若手女子に対抗して頑張ってもらおうとした、ベテラン男性営業マンのおすすめ作品はあまり良い動きは見せていません。ちょっと心配な状況です。

店の若手社員のおすすめ作品を店の入り口を使って仕掛け売りの経験を積むように仕向けたはずなのですが、入社2年目男子の担当ジャンルの商品が多く並んでしまいました。
彼の頑張りがその後の店の入り口の活性化をもたらし、その後の若手女子の活躍につなげたいと思います。

結果の検証
入社2年目若手女子とベテラン男性営業マンのおすすめ商品7連発の検証は、6月の月間売上で実施しました。
展開作品は軒並み月間ベストの上位を占めて、予想以上の効果がでています。特に『脳には妙なクセがある』は店内の総合ランキングの第一位に輝いています。

 6月月間総合 1位『脳には妙なクセがある』        新書1位
        3位『自分の壁』              新書2位
        4位『パソコンの裏ワザ~』         理工1位
        7位『何でも英語で言ってみる』       語学1位
       13位『だから日本はズレている』       新書3位
       17位『頭のいい人はなぜ、方眼ノート~』   ビジネス9位
       22位『脳の強化書』             ビジネス11位

月間総合売上の上位を占めた若手女子のおすすめ作品と、中位にいるベテラン男子営業マンのおすすめ作品の対決は、今のところ若手女子に軍配が上がっています。

店の入り口活性化のために行ったボリューム陳列7連発は、複数個所陳列の作品が多勝ったこともあって、7アイテムトータルで500冊以上の実績となりました。それまでの雑多な商品の売上と比べると抜群の実績と言えます。

9月末の時点の調査で『脳には妙なクセがある』はこの店での累計売上が600冊を超えました。新書担当はこの作品で1000冊越えを狙うと言っていますし、若手営業女子も10万部を目指すと言っています。

こういうチャレンジ精神が未来を創ってくれるのでしょうし、他のメンバーも成功体験を築くことができたはずですので、今後の活動に大いに期待したいと思います。

店頭の一等地におすすめしたい商品をボリューム陳列するのは、ある意味、書店員の心意気の現われと受け止めることができます。書店員一人ひとりの心意気が強く感じられるからこそ、お客さまを呼び込む力になるし、強い売上を作ることができます。

入社1~2年目営業女子も自店の若手担当者たちも、売上をつくるための商品確保や陳列の技術を駆使して、「店頭で劇的に売上を上げる技術」を会得したはずですので、今後は一皮むけて、もっとステップアップした仕事をしてくれることを期待します。