2015年12月18日金曜日

仕掛け売りのスペースは全体最適がいい!

『あなたの影響力が武器となる101の心理テクニック』
この作品は『価格と儲けのカラクリ』の著者が違うペンネームで刊行しているものです。『価格と儲けのカラクリ』では真っ黄色な表紙で驚かされ、「装丁の色で売上が変わること」を認識させられました。

 10万部メーカーに依頼されて、都心の店で仕掛け売りをして10万部突破に貢献した『思い通りに人をあやつる101の心理テクニック』のシリーズ第3弾でもありますから、この作品には自分なりに思い入れがありました。今回の作品のテーマは「影響力」です。

チェーン店本部でバイヤーの仕事をしているときに、自社の販売冊数を3年で2倍にした営業マンがいました。彼は沿線の主要駅にある店の担当者と懇意になり、その店で積極的な拡販をしていました。

「あの人が仕掛ける作品はよく売れる」
「あの店で売れたものはうちの店でも売れる」
そのように考える店担当者はたくさんいます。

彼にとってはその店の担当者がキーパーソンなのです。チェーン店に限らず影響力のある店担当者はあちこちにいるはずです。営業マンにとってキーパーソンをつかむことはとても重要なことです。それが店を回ると売上が上がる魔術につながっています。

沿線の中核駅にある店の影響力の強い担当者と協力して仕掛け売りが成功すると、他の店も追随してくれてチェーン店内に拡販を広げていくことが容易にできました。
そうして3年間で43,000冊から83,000冊にまで売り伸ばしてくれたのです。これも影響力を使った売上を上げる魔術なのでしょう。

『あなたの影響力が武器となる101の心理テクニック』は新刊配本時に100冊入荷して入口のテーブルで9面展開がスタートしました。出版社の営業担当と店の新書書担当が協議をして、事前に部数と拡販スペースを決めていたようです。

めちゃくちゃブレイクしているわけではありませんが、着実に安定して売れているようです。2週目、3週目にはビジネス週刊ベストにランクインをしました。その後も売れ行きは好調に推移しています。

追加注文はしないの?と新書担当に聞いたところ、12月の新書は大量入荷品が続くため、新刊コーナーでの4面展開に移行せざるを得ないので、追加注文は迷っていると返事でした。

この答えからは彼が販売ステージを固定して考えている様子がうかがえます。今使えているスペースの中でしかものごとを考えていないということです。ジャンル担当者にありがちな考え方だとは思いますが、いかがなものでしょうか。

仕掛け売りは店全体を使って商品の展開場所を決めることが大切です。そのために担当者間の意見調整が必要ですし、その結果、全体最適の条件が満たされるとみんながハッピーになるはずです。

そう言いながらも新書担当は販売データを見て、その後に101シリーズの新刊の追加注文決めました。どのスペースを使うかはまだ決めていないけど、どこかで仕掛け売りは継続したいという思いなのでしょう。

「ベストテンコーナーの横のテーブルに賞味期限切れのような作品が並んでいるけど、その場所を確保したらどうなの?」

「店にとって一番いいこと、作品にとって一番いいことが、担当者間でうまく調整できると店としての売上が稼げるんだよね」

その時点で3台のテーブルには実用書系、文芸書系、コンピュータ系の作品が並んでいましたが、最近入れ替えたばかりの文芸書を除くと、長く拡販を続けている作品ばかりで今の動きはそれほどいいとは思えません。

担当者自身も、12月刊行の新書の新刊は注目作品が目白押しなので、注目作品に押し出されて、売れているのに拡販スペースから弾かれてしまうのはもったいないと感じていたのでしょう。
実用書の担当者と調整をして、スペースを空けてもらうことに成功しました。

担当者全員が店の拡販スペース全体をどう運用していくのかを真剣に考えているならば答えは容易に見つかるものです。
自分さえ良ければいいとか、既得権益として拡販スペースを渡さない、というような考えを持っていると全体の効率を悪くする要因となります。

商品の売れる時期は常に変動しています。その時点での最適を考えてスペース配分をするとより大きな売上を稼ぐことができます。

お互いに仕掛けている商品の鮮度を意識し、販売データもチェックしながら、商品ごとのスペースを入れ替えていくことが全体最適につながります。全体最適が最も効率よく店全体の売上を稼いでくれます。

『あなたの「影響力」が武器となる101の心理テクニック』は『男と女のワイン術2杯目』が入荷した段階で入口のテーブルから追い出され、新書担当の調整力のおかげで4~5日開けただけでベストテンコーナーの横のテーブルにボリューム陳列が復活しました。


入口のスペースから追い出された4~5日間は低迷していましたが、販売ステージが復活してからは売上がV字回復をしています。果たしてどこまで売り伸ばせるのか、今後が楽しみになってきました。

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