2015年12月17日木曜日

ミニうり坊 入社2年目男子の挑戦

入社2年目男子
入社2年目男子はもともと沿線の小型店でアルバイトをしていました。そして社員に登用されると同時にこの店に移動になってきました。社員としては雑誌と新書と語学書を担当しています。

元々社員に登用されたわけですのでそれなりに光るものがあったのだと思いますが、働いている姿を見ていると商品に対する目の付け所がいいと思えました。担当外の文庫の拡販についても若手社員仲間が担当している気安さもあって積極的に発言していました。

彼が文庫で光を放ったのが、1994年3月刊『旅のロゴス』新潮文庫 筒井康隆著の拡販でした。2014年の夏にテーブル1台のボリューム陳列を仕掛けて大ブレイクスルーを成し遂げています。

文庫は作品ごとにランク設定されていますので、多くの店がランクインしている作品を中心に品揃えをしています。その時点ではABCというランク設定されていないランク外商品でした。
この店ではランク外でも棚回転のいい作品は品揃えをしていましたので、通常の店では在庫しない作品でも棚でよく売れていました。

そこに目をつけたのが入社2年目男子でした。旅ものは毎年夏になると売れるテーマだし、著者も魅力的で作品自体の評価はとても高いと言っていました。
そんなことから入社3年目女子と相談してテーブル1台展開で仕掛け売りをすることになったのです。

7月5日に注文していた200冊が入荷して仕掛け売りが始まりました。ネットで検索して旅を連想させる写真を取り出して、それを下地にタイトルコピーを入れてA3サイズのPOPパネルを自作しました。

このパネルは仲間内でも評判がよかったようです。商品が展開されると同時に週売20冊以上の売上が取れていきました。気をよくして手書きPOPをつくりボリューム陳列に添えると売上は一段と大きくなっていきました。

夏休み時期に合わせた拡販のはずだったのですが、売れ行きが落ちなくて、継続してテーブルを使え、6ヶ月間拡販を続けました。仕入は600冊を超え、販売実績は500冊近くにまでなりました。

他の店にも仕掛け売りが伝播したようで、出版社の営業担当によると『旅のロゴス』は重版もできて、再度のブレイクを果たしたということでした。そして、何時の間にかランクなしのこの作品にもランクが設定されていました。
これでどの店での在庫するようになるはずだし、在庫されることによって売れ行きがますます高まることが確実になりました。

『なんでも英語で言ってみる』
この作品は2014年6月に店の入り口活性化対策で行ったボリューム陳列7連発の中の三番手として取り上げられた作品です。元々は語学書売場のエンド平台でテープを流しながら販売していました。

それなりに売れているのに売れ行きに合わせた商品量が確保できず、もっと在庫があれば売れるのにという印象を持っていました。入社2年目男子は商品確保がままならずボリューム感が維持できないことを嘆いていました。入社2年目男子としてはとてもフラストレーションがたまる売り方をしていました。

「商品をもっと手配できれば、もっと売れるのに」
出版社の入社2年目女子の営業担当も同じように考えてたようで、社内での部数確保ができなくてちょっとへこんでいました。

重版のロットを大きくしない傾向がある出版社では、売れている作品は営業マン達の在庫の奪い合いになることがあります。そうなると若手には部数確保が難しくなり、仕掛け売りをして強い実績が作れても持続できないことが間々あります。

『こころのふしぎなぜどうして』という作品で塾生が10万部計画を実施して、50万部以上の実績を作った際に、初期の拠点づくりからベストセラーづくりに至る過程で積極的に協力した縁がありました。

元塾生やその上司に自分の名前を言えば、必ず商品は確保できると二人に伝え、同時に、店頭の一等地でボリューム陳列すること、テープを必ず流すこと、ふたつの条件を申し入れて交渉してもらいました。

注文した商品は6月11日に減数なしの150冊が入荷しました。入社2年目女子営業担当が頑張ったのだろうし、入社2年目男子も入口での大きな展開ができることを喜んでいました。入荷した朝のうちに商品を並べ、パネルやPOPをつけて陳列しました。

用意できたのは比較的大きなテーブルでした。その1台を使ってボリューム陳列をしましたが、縦3列6列並びましたので、18面積みの大きな展開ができました。本の厚さもけっこうありましたので、高さも確保できボリューム感満点でした。

パネルや手書きPOPをつけて訴求力を高め、レコーダーを置いてテープを流し始めたら、週売20超えが作れました。売上は好調に推移して、150冊の仕入では足りなくなるほど売れました。

『脳には妙なクセがある』と出会う
入社2年目営業女子が店に営業に来た時、ビジネス書の拡販ステージでは『覚悟の磨き方』が大きな展開をしていました。27面展開ができるスペースで片方にタワー陳列をつくり、もう一方で9面のボリューム陳列がされていました。

「どうしたらこんなふうに陳列してもらえるのでしょうか」
そんな素朴な質問をしてきましたので、この店での仕掛け売りの基本的な考え方、どの程度の売上を目標としているのかを説明しました。

その時の彼女のおすすめ作品は『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある』という長いタイトルの作品でした。それなりに売れていましたし、何回か注文を繰り返していましたので、いい場所にちょっと強めに商品を展開したら、トントンと売れていきました。

売れ行きが良くなると「これくらい売れるんなら、タワー組んであげるよ」と言って実際にビジネス書の販売ステージを使って、大きな展開で仕掛け売りをしました。売れ行きが好調なせいか、この著者の作品が次々と刊行されるようになりました。

そんな出来事があって以来彼女は定期的に営業にやってきて、積極的な姿勢とやる気が伝わって若手社員たちとも仲良くなっていきました。
新書ダービーで候補作品をノミネートしたいと言い出した時も、入社年目男子が気持ちよく反応して、二人で作品を押す重複推薦になりました。

彼らが推した『脳には妙なクセがある』は2013年12月刊で、初回配本は3冊、すぐに追加注文して新書エンド台で売り伸ばしていた作品でした。彼らに「仕組みを使って売り伸ばす方法」を伝授すると、二人ともその気になっていきました。
二人は「200冊展開で一気に売上を作り全店一位に押し上げたい」と言いだし、「店の入り口のテーブルを使わせてください」とも言ってきました。

注文した200冊は6月9日に入荷しました。新書ダービー開始から1週間以上経過していました。入口では小さめのテーブルを2台つなげて変則的な陳列をし、新書ダービーに隣接したステージでも大きな展開をして、2か所でのおすすめ本の展開が始まりました。

その週から週売40以上の実績が作れて、それが4週間続きました。1か月間の新書ダービーではこの店の売上が牽引して全店で第一位を獲得しました。

8月から開始された拡販キャンペーンでは第一位帯をまいた作品を入口と店内での2か所でボリューム陳列し、ダービーを戦ったラックでの40面展開などをしました。また、それぞれの場所でのPOPの使い方等々で工夫を重ねました。

その結果、800冊を超える販売実績をつくりましたし、拡販期間終了後各店の在庫をかき集めて販売するほどとなりました。作品の刷り部数は10万部を超え、自分のおすすめ作品が貢献ができて、努力した甲斐があったと喜んでいました。


2匹目の泥鰌をねらう
2015年の新書ダービーは事前に得た情報からは売りたくなるような作品が見たりませんでした。そこで、彼は自分なりに売れそうな作品を探し出してノミネートすることを考えました。白羽が立ったのは朝日新書の『数学的決断の技術』でした。

2013年12月刊のこの作品はそれほど目立った実績は上げていませんでしたが、彼にとっては魅力的なタイトルのようでしたし、売れそうな予感も持てたようです。店担当者推薦枠でノミネートし最終候補作品に選ばれました。

新書ダービーは2015年6月1日にスタートしました。前回はダービー期間の約3分の1程度経過してから200冊が入荷して拡販をしましたが、今回はダービーの開始時期に合わせてすぐに商品展開ができるように事前に手配をしました。

入荷した作品を見て、タイトルも帯のコピーもいい。これを担当者イチオシ作品としてお客さまにアピールすると必ず売れるような気がしてきました。
実際に商品展開をして販売を開始すると、圧倒的な販売実績が取れたし、1か月間の販売期間でもとても強い実績がつくれました。

ダービー期間中に競合作品『男と女のワイン術』の担当者がやってきて、積極的に営業アプローチをしてきました。懇意にしている担当者ですので無下にもできません。2番手押し程度の仕掛け売りを開始することになりました。そしてそれなりに売れていきました。

その作品がダービー期間中に朝日新聞の「売れてる本」に登場してしまいました、これはルール違反だろうという人もいましたが、別段ルール違反ではありませんし、文庫ダービーでもこうしたケースがありました。

朝日新聞の「売れてる本」に掲載されると全店的にブレイクしていきました。単店では『数学的決断の技術』がリードしていましたが、『男と女のワイン術』全店で売れていきましたので太刀打ちできず敗北してしまいました。

入社2年目男子の店での販売実績は全店でもトップクラスの実績で全店をけん引していました。もし自分がこのかもしれない。そんなことを考えたこともあったようですが、売れる作品は売れるように売るのが書店員の姿ですから、これは致し方のないことでしょう。

『数学的決断の技術』は1か月で250冊程度の販売実績を記録しながら新書ダービーで第2位に終わってしまったため、彼の店でも継続的に販売はしていますが積極的な拡販は終息していきました。

『男と女のワイン術』は拡販キャンペーンでは2度見3度見でその気にさせる作戦を取り、3か所で展開を実施し、累計売上500冊程度の実績をつくっています。

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