2015年9月1日火曜日

物語うり坊  仕組みを使って売り伸ばす

企画へ参加
うり坊の全店企画に参加するには推薦作品のノミネートが必要です。最もその前の段階で企画の詳細を示すご案内と企画書を手に入れなければなりません。

うり坊は出版社の担当者宛てに一斉メール送信で案内は送ります。ただ、メールのアドレスを交換すればいいという訳でもなくて、事前に店の担当者や仕入部のバイヤーとの商品を通じたお付き合いが必要となります。

店の担当者や仕入部のうり坊の仲間に入り、企画への参加を申し出るとようやくご案内をもらえるようになります。それが企画へ参加する第一歩なのです。

ご案内は基本的に全店フェア開催の2か月前にはお手元に届くようにしています。企画ごとに条件が設定されている場合もありますので、その条件に当てはまる作品をノミネートしていただくようになります。

集まったノミネート作品の選定会議は、店の該当ジャンルの担当者と本部スタッフを招集して行われます。基本的にテーマが面白く、タイトルが良くて、思わず売りたくなるような作品がうり坊メンバーには好まれます。

今売れている作品でなく、既刊本の発掘を前提とした企画が多いので、事前に自社の作品の棚卸しをしておく必要があります。ポテンシャルが高く、ダービーに参戦して売れそうな作品を見つけ出さなくてはなりません。

先ずは売れる作品選びが第一のポイントです。取り上げようとする作品の魅力や、如何に売れるかを店のキーパーソンに話してみる。そして、実際にどれだけ売れるのか、テストをしてみる。そうしたことも必要なのかもしれません。

うり坊の企画では、出版社や店の担当者の売りたい気持ちが強い作品が選ばれる傾向があります。従って、熱のこもった推薦文がうり坊のやる気を喚起する決め手になることもあります。
熱意が伝わり、書店員をその気にさせると店頭での扱いが変わってきますし、積極的に販売してもらえる条件も整ってきます。

ダービー出走作品に選出されると、出版社担当者宛てに連絡が入ります。推薦作品のノミネートから出走作品の選定の連絡が来るまでは、どの出版社の担当者にとっても、とても気がもめる期間となるようです。

一位獲得
ご案内をもらい、推薦作品を選び、本部へのノミネートを済ませ、選定会議で選ばれるとようやく全店企画へのスタートラインに立つことができます。ただ、指定された部数での商品供給だけではなかなか上位に入れないのが実情です。

全店フェアが始まると、店を廻り、POPを配り、作品の置き場所や展開方を相談しながら、追加注文を受け、他社の作品よりも優位に立てるようにします。ここでは店への訪問頻度と担当者の営業力が問われます。

店の担当者との話がまとまり、重点的に拡販をしていただく店を作ることができると、店での第一位を狙うことができます。そして、店ごとの第一位をどれだけ作ることができるかで勝負は決まります。

上位入賞者は店をよく回り、担当者と話し込み、POPやパネルを供給し、売り方を提案していました。そして 追加注文を積極的に集め、店ごとの展開に合わせた部数を投入して、大きな販売実績を作ることを狙います。

「店を回ると売上が上がる魔術」が使える営業マンがこうした場合に力を発揮します。ただ、参加店数が多くなるにつれて、一人だけでは店を回り切れないようにもなりました。
そこで、他のメンバーを含めたチームワークが必要となりました。担当営業マンの周囲のメンバーが積極的に協力する体制ができると、一位を狙う態勢が整います。

1か月の全店フェアの期間は長いようで短いものです。商品の受注から搬入、店への入荷までの流通速度を理解した上で対応しないと、なかなか勝負にはなりません。

営業マンとしてのルーチンの仕事には、地方への出張が組み込まれているケースが多いでしょう。一位を争っている場合、ダービー期間中の勝負どころで地方出張に行ってしまうと、対応しきれない場面も多く生じてくるようです。
それまで一位をキープしていたのに、最終週に出張が入って、その不在の間に逆転を許し、第一位を逃してしまった。過去にはそんな苦い経験をしたケースもありました。

こうした条件に打ち勝って、チームとしてダービーに対応することができた出版社が第一位を獲得するようです。

第一位帯
1か月間のダービーを闘って見事第一位に輝くと、2か月間の拡販キャンペーンが待っています。キャンペーンでは基本的に1回の重版のロットをまかなえるような部数での拡販を狙って第一位帯を作成しやすい環境を整えます。

ダービーが終了すると一位を獲得した出版社を訪問し、結果報告と拡販キャンペーンの相談をします。その時点で拡販キャンペーン用の専用帯を作っていただくことをお願いします。

帯のデザインは出版社の方に23種類の候補を送っていただき、字体や色使い、表紙全体の雰囲気をチェックして決めます。帯の裏面は企画の説明と、どのような経緯で第一位を獲得したのか、簡潔な文章にして書き込みます。

第一位が決定してから帯付きの商品を搬入していただくまでにあまり日数がありませんので、デザインの打ち合わせは23回のメールのやり取りで行います。

うり坊の想定する第一位帯は、こてこてとした飾りや文字数の多いものを嫌い、シンプルで第一位がはっきりと伝わるような大きさの文字を使いますし、色遣いも字体も明快なスタイルを好みます。

拡販キャンペーンでは多くの店が100冊以上の冊数でボリューム陳列をします。だから、帯は店頭の一等地で、第一位作品が10面、20面と並んだ状態をイメージしてデザインをしていただきます。

単体を見て、いいデザインだ、センスがいい、色遣いが良いなどと言っても、多くの商品が並び色彩も豊富な店頭で、多面で並べた状態での訴求力が出ないデザインがあります。
そうした帯にしてしまうと売れる帯にはなりませんし、見た瞬間にこれはダメだと思ってしまうようでは後の祭りとなります。

専用の第一位帯を巻いた作品は他の書店には出回りませんので、その時点からオリジナル商品となります。自社の社名入りの第一位帯が訴求力を示すと、思いがけないほどのペースで売れていきます。

販売力の伴ったオリジナル商品は、その時点からプライベートブランド商品と言っていいのではないかと考えています。

売り伸ばし
売れる第一位帯が出来上がると拡販キャンペーンでは狙い通りの動きを作り出してくれます。文庫の企画では最高記録は2か月で11000冊を超えていますし、ビジネス書でも1800冊以上販売することができました。

うり坊にとっても売れる商品をより多く売ることが、自身の売上目標をクリアするための手段になります。

ダービー出走既刊に自店のコーナーにハレパネで競走馬をかたどった特製パネルを作り、毎日順位を変更しながら表示できるスタイルを考案したうり坊がいました。自店での販売推移をお客さまに見せると、関心を寄せるお客様が多くいらっしゃいます。

自店が強く推した作品が全店で第一位を獲得すると、拡販キャンペーンのPOPパネルに
「この店の圧倒的な力で全店第一位になりました」
という様な文面を入れることもしました。とても大きな販促効果があるからです。

うり坊が全店フェアの商品選定段階から目を付けている作品があり、事前に出版社担当者にアプローチして協力体制をつくる。それが思い通りに売れて第一位を獲得すると、自身の店での販売実績がブレイクスルーしていきます。

ダービーでは店によって押す作品は違いますが、特定の店で圧倒的な強さで第一位を獲得する商品は、第一位帯を巻くと、どの店でも売れるようになることがあります。
影響力のある規模の大きな店で強めに商品展開をして、その店で勢いをつけて、全店での第一位を意図的に狙うことは何人もが行ってきました。

書店員向けの塾ではこうした売り方を「仕組みの力を利用して売り伸ばす方法」としてテキストの一部に組み込んでいます。

塾生たちはこのスタイルで書店発ベストセラーづくりにチャレンジしましたし、
「単店で年間に1000冊越えを3本つくる」
という個人目標をクリアするための方法として重宝していました。

特定の店で売れるのはその店の客層に合っている作品だからだろうと思います。だからといってその店だけでしか売れないかというと、そうでもないのです。男性向けに作った作品が何時の間にか女性に広がることにもあります。

特定の客層向けに作った商品が、そうした客層に強い店で売れていき、何時しかどの店でも売れるベストセラーになるのです。とても不思議な現象なのですが、これが大概のベストセラー作品に共通する売れ方なのです。

仕組みを使って10万部?
第一位を獲得し、拡販キャンペーンを実施すると、それがベストセラーづくりのためのテストマーケティングとして活用できるとうり坊は考えています。

ダービーでも同じことなのですが、都心の店や沿線の中核駅の店、大きな店や小さな店を含んだバラエティに富んだ店で同時に商品を販売します。店ごとの売れ方を分析すれば、全国的な市場へアプローチする方法が見えてくるのです。

規模別や客層別に店を把握しておけば、結果が出た店と類似している店へ拡販を広げていくことが可能になります。一位を取らなくても、上位に入賞できれば他の書店向けに拡販するチャンスは得られます。

全店で行う拡販キャンペーンは、沿線を中心にしたまとまりのあるエリアで、第一位の作品1点だけをボリューム陳列することになります。販売実績も通常の全店的な仕掛け売りよりも反響が大きくなります。

通常、ベストセラー商品のシェアはだいたい1%程度なのですが、うり坊の企画の最高成績だった作品は、拡販キャンペーン終了時点で累計で18000冊を販売し、刷り部数の15%のシェアを獲得していました。

全店フェアで一位を取ると他の書店チェーンでも拡販に応じてくれるようになりますので、10万部以上のベストセラーに狙うことができるようになります。そんなことから、第一位を取りたいと思っている営業マンは多くいるのです。

「どうしたらこういう風に陳列していただけるのですか?」
入社二年目若手女子が、店の一等地に並んでいるテーブル一台を使った200冊レベルのボリューム陳列を見て、こんな質問をしたことがありました。

「うり坊の企画で第一位を取ればこのように陳列します」
企画の概要や仕組みを説明しながらこのように答えました。その後彼女とは頻繁に話をすることになり、10万部計画の実践の仕方を紹介したこともありました。

3か月後、新書ダービーに参加した彼女は、店の新書担当を巻き込んで、大きな商品展開をしてもらい、その店の圧倒的な販売力を利用して、全店での第一位を獲得しました。そして、営業部一丸となって他の書店にも積極的な営業を行い、見事に10万部計画を成功させています。

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