2015年8月5日水曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 19

順位確定
お客さまのお買い上げが最も信憑性が高いのではないかという意見が出たり、お客さま投票、スタッフ投票が販売実績に対して少ないことから、どれだけの価値を持つのか不安でしたので、ポイントをどう加算するのか迷いました。
最終的にお客様ポイントとスタッフ投票ポイント、売上ポイントはすべて1ポイントずつでカウントし順位を決めることにしました。

作品別順位
第一位 『床下仙人』祥伝社文庫
第二位 『リオ』新潮文庫
第三位 『時の渚』文春文庫
第四位 『ジャンプ』光文社文庫
第五位 『カタコンベ』講談社文庫

以下、『火の粉』、『サンドブレーク』、『愛こそすべてと愚か者は言った』、『大正時代の身の上相談』、『メインディッシュ』、『風少女』の順となりました。
1か月間で600冊以上販売して首位争いに加わったのは5作品でした。6位以下の作品も健闘しました。

唯一のノンフィクション作品『大正時代の身の上相談』は当初の丸山の予想を裏切り(?)大健闘の8位に入っていました。
出版社訪問の担当は多田野と後藤でした。拡大うり坊会議での絞り込みでも彼らが強く推して残った経緯がありました。筑摩書房の梅野さんを始め出席していただいたみなさんに強力プッシュされたのかもしれません。経過は聞いていませんのであくまでも憶測です。

全店フェア終了後、SCの広報から取材を受けたとき、取材に同行したカメラマンの女性が、「私も買って読みました。おもしろかったですよ」と言っていました。店の担当者からも内容のユニークさが一部の人たちに受けていたようですという報告がありました。

既刊本でちょっとマイナーな作品でしたが、そうそうたる顔ぶれの作品の中で負けることなく主張する何かがこの作品にはあったのでしょう。お客さまの心を動かす何かがこの作品にあったのでしょう。

埋もれていた作品が陽の目を浴びて、お客さまに見ていただけるチャンスを得たことは非常に良いことだと考えています。

もうひとつの新記録
おすすめ文庫全店フェアでは『床下仙人』が文句なく第一位に輝きました。お買い上げで圧倒的な差をつけたことで、祥伝社の景浦さんと原宏一先生にとって、お客さまは神様です思える結果となったように思います。

拡販キャンペーンに移行するまでに1ヶ月の猶予がありました。フェアを継続している店も多くて、販売実績は続伸していました。11月末までの2ヶ月間で合計販売実績は、約7800冊でした。これは『月の扉』の2か月間の販売数を超えています。

フェアそのものと全店大仕掛けの商品展開のスペースは、そんなに変わらないと考えられますのでこれも新記録なのかもしれません。おすすめ文庫全店フェアがもうひとつの全店大仕掛けになったと捉えることができます。

2ヶ月間での販売実績
第一位 『床下仙人』  1300冊超え
第二位 『リオ』     950冊以上
第三位 『時の渚』    900冊以上
第四位 『カタコンベ』  850冊以上
第五位 『ジャンプ』   800冊以上
その後は400冊台が3点、300冊台が2点、200冊台が1点となりました。

6位以降の作品は消化率が4割以下でしたが、初回投入冊数が11000冊でしたので、2ヶ月間で約70%の消化率となりました。全店フェア終了後は積極的な拡販はしていない状態でこの数字が出たことはとてもうれしいことでした。
70%を超えた消化率の全店フェアは大成功だとうり坊は考えました。

おすすめ文庫全店フェアの結果は、最終候補作品に残ってフェアに参加した出版社だけでなく、候補作品をノミネートしていただいたすべての出版社にお知らせしました。

「一位を取れなかったのは残念。でも1ヶ月でこんなに売れのたはとてもうれしいです」
「2年連続の第一位を狙っていたのですが、結果は4位でした。店を訪問するたびにわくわくできたのは、営業担当としてはとても楽しかったです」
「お知らせありがとうございます。今回はフェアに参加できませんでしたが、次回は頑張ります」
こうしたメールが返信されて、ほっと一安心しました。

打ち合わせ
おすすめ文庫全店フェアの結果を資料にまとめ、第一位に輝いた祥伝社に結果報告にいきました。担当の景浦さんを訪ねると営業部長と次長も同席され、3名におすすめ文庫全店フェア第一位の報告を行いました。

「ほんとにこれでいいんですか」
どういう訳か景浦さんの最初の一言はこんな言葉でした。
「ほんとにいいもなにも、第一位ですからこれで決まりです」
「いいのかなあ」
まだそんな言葉を発しています。

信じられない気持ちとこの作品で本当にいいのかなという錯綜した気持ちを素直に表現されたようです。

丸山はスタッフ投票では違う作品を押していましたし、大手の出版社の作品だったら、もっと喜ぶ気持ちが大きく表れたのかもしれません。そんな状態の丸山の報告から、決まったのだからしょうがないというニュアンスをかぎ取っていたのかもしれません。
申し訳ありません。

作品の内容に対して不満を持っていて
「いいのかなあ」
と言ってしまったのだとしたら、
「第一位はお客さまのお買い上げ、お客さま投票、スタッフ投票で決めました。だから第一位になった作品が一番なんです」
と言いたいところです。

その場で初回投入冊数は5000冊に決まりました。
12月1日から1月31日までがキャンペーン期間。
11月21日ごろまでに取次に搬入する。
おすすめ文庫全店フェア第一位の帯付きで出荷すること。
帯のデザインはPDFに変換してメールで送信すること。
以上が決定事項として双方が確認しました。

帯のデザインは3種類ぐらいを提案していただいて、2~3日で修正すべきところを打ち合わせして、出版に間に合うように配慮することになりました。

「ところで、12月中にどのぐらいの量を準備しておけばいいのでしょうか」
景浦さんからまた、意表を突く質問がなされました。

確かに冬休みは製本所も印刷所も止まりますし、重版はままならないのだろうと思いますし、物流も難しい条件が予測されます。
「そうですね、最高に売れた場合を想定するとあと5000冊、合計10000冊がめどになると思います」
これが強気の丸山の返事でした。

当初の販売目標は『月の扉』に匹敵する2か月で7000冊でしたが、丸山の右脳あたりに売れる予感がうごめいていましたので、2か月で10000冊がちょうどいいのかなと思い、強気の返事をしてしまったのでした。

「御社限定帯付きの出庫ですので、注文の窓口を一本化していただけませんか」
「店からバラバラと注文いただいても帯付きで出荷されない場合も出てくるような気がします」
「注文する方だけでなく、受ける方も一本化した方がよいかもしれない」

三人方々からこんな意見が出てきましたので、注文は本部の文庫担当バイヤーが一括して行うことにして、受注窓口も景浦さんに一本化することが決まりました。

帯のデザインは打ち合わせの素実後から開始されたメールのやり取りで決めました。最初に景浦さんからデザイン案を送っていただきましたが、納得できるものがなく、丸山が修正案を作って逆提案をしました。

最終的に紺地と黒地の2案の帯のデザインが出来上がり、山村社長の判断を仰いで、黒字の帯に決定しました。

元々この作品が黄色主体でしたので、黄色と黒のタイガーカラーになりました。裏表紙の部分に簡潔におすすめ文庫全店フェアの説明文を書き込み、背の部分にもおすすめ文庫全店フェア第一位とはっきり書き込まれていました。

贈られてきたPDFから印刷して、実際に商品に帯を巻いてみました。
「なかなかいいね」

丸山と文庫担当バイヤー川口さんがそれぞれ自画自賛していました。

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