2015年7月26日日曜日

物語 うり坊とうり坊な人々 9

停滞を乗り越えるために
その後、全店大仕掛けでは3点商品を取り上げましたが、『99%の誘拐』のようなブレイクスルーはできませんでした、

それぞれ2か月間で、
『ナンプレ』が4000冊強、
『コンビニララバイ』は2000冊、
『雑学図鑑』が4000冊弱、
という販売実績でした。

雑学系の作品2点は3ヶ月でとりあえず5000冊をクリアして面目を施しましたが、小説系の『コンビニララバイ』は4か月間でようやく4000冊を超えただけでした。

うり坊の個人的な仕掛け売りがきっかけとなって、バイヤーが全店で拡販を進める中仕掛けでは10000冊を超える作品が次々と出ています。それなのにうり坊が進める全店大仕掛けはそのような作品は出てきませんでした。

「『99%の誘拐』で成功した出版社との協力体制に胡坐をかいているのかもしれない」
「出版社担当者の囲い込みが作品の出版社だけに偏っているのかもしれない」
そんな考え方が丸山の頭にだんだんとこびりつくようになりました。

うり坊の仕掛け売りも各自が進める個別な作品が活性化していて、それがバイヤーの中仕掛けに繋がり、本部一括の仕掛け売り作品が次々と送り込まれてくる。
うり坊メンバーに敢えて全店大仕掛けというスタイルにこだわらなくてもいいと思っている空気感も生まれているような気もしました。

うり坊のグループとしての検討が不充分で、総意がまとまりきっていないうちに全店大仕掛けの作品を選定してしまっているのではないか。だから、結果がついてこないのではないか、という意見もうり坊を卒業したベテランの社員から指摘されていました。

元々、うり坊の大仕掛けがチェーン全体の牽引車になって実績をだんだんと積み重ねるようになり、出版社とのお付き合いもできるようになってきています。ここで飛躍のステップを踏むことができれば何かが変わると丸山は考えました。

大ブレイクした販売実績が前年実績となる秋が来る前に、全店大仕掛けの展開をどうするのか、うり坊会議を開催して検討しました。

改善会議
丸山:「春先から全店大仕掛けではいろいろの作品を手掛けてきましたが、目標をクリアできている作品がなく、あまりうまくいっていません」
金沢:「中仕掛けでは10000部超えがたくさん出ていますけど、全店大仕掛けでは販売部数の飛躍がありませんね」
山森:「新しい要素をもうひとつ加える必要があるのかもしれない。そうすればステップアップができるかもしれません」
多田野:「『99%の誘拐』の成功事例をもう一度分析した方がいいのではないでしょうか」
森山:「大仕掛けのころまではうり坊と本部バイヤーという自社内部だけで企画を考えていました。これに出版社の力が加わりブレイクスルーが起きました」
遠藤:「そうか、出版社を一社だけでなくもっとたくさん巻き込んだらいいのかもしれませんね」
金沢:「1社だけでなく複数の出版社を同時に巻き込むにはどうすればいいのでしょう」

多田野:「自分たちが売りたいと思う気持ちだけではインパクトが弱いのかもしれない」
森山:「もしかして出版社の担当者も売りたい作品があるのかもしれない」
多田野:「出版社の知恵をもっと引き出すと流れが変わるのではないでしょうか」
金沢:「みんなで出版社訪問をして出版社担当者の売りたい本をリサーチしよう」

うり坊会議での話し合いで出た意見から、
「出版社をもっと巻き込もう」
「出版社の知恵をもっと引きだそう」
そういう意見にみんなの心が動いたようです。

金沢:「出版社を巻き込むための方法ってどんなことが考えられるのでしょうか」
遠藤:「店に来る営業マンの話しを聞くとか、相談するとかですかね」
丸山:「まあそういう方法もあるけど、2~3日かけて一気に出版社を回ってそれぞれに意見を聞くこともできるよ」
金沢:「前の会社でそんなことしていたんですか」
丸山:「新規店の出店の際には何時も出版社廻りをしていたし、管理職として新人を預かった時には、新人が戦力化したころを見計らって担当ジャンルの出版社を訪問したこともあるよ」
遠藤:「そうなんですか。じゃあ、今回も何とかしてください」
丸山:「また出版社訪問を始めるか」
多田野:「さっそく計画を立てましょう」

うり坊的出版社訪問
出版社訪問が上手くいく秘訣は訪問先のルートづくりにあるといえます。複数の出版社を効率よく回るためには移動時間の短縮が課題となります。出版社のある場所は複数の出版社が密集しているケースもあるし、孤立している場合もあります。

どこを重点的に回るのか見極めることが必要な要素です。じっくり時間をかけたい出版社と、短い時間で効率よく話したい出版社で、時間配分を変えることも必要です。やはり目的を明確にすることが最も重要な要素になるのではないかと思う。

うり坊の出版社訪問は知恵を借りること、仲間をつくることが主眼となりますが、若手や新人も連れていくことを考えると、彼らにとって重要な出版社はおのずと限られてきます。その辺の調整がとても重要だと考えていました。

1日5~6社が限度だろうと考えて、なるべく移動時間を短くするように配慮したとしても、ぽっかりと時間が空いてしまうことの良くあることです。そうした場合は一緒に訪問しているメンバーと話し合う時間にすることも大切なことなのかなと思います。

こういう機会から仲間意識が生まれ、うり坊の企画に重要な役割を演じてくれるキャストになってくれることもあるようです。出版社のメンバーを囲い込むと同時に連れて行ったメンバーも囲い込む。それがうり坊的出版社訪問のやり方でした。

出版社の社員は自社の商品は詳しいはずです。そうした方の知識はたくさん吸収すべきです。勉強の機会になることは請合います。新人に多くのチャンスを与えるためにも、人数も回数もなるべく多く引き連れて出版社に訪問する機会を作るようにしていました。

出版社のキーマンを知ることは大切なことです。キーとなる人物につながりがつけば欲しい商品を確保できる可能性が高まります。
出版社にとって書店のキーマンは必要なものを必要なタイミングで売ってくれる書店員でしょうし、全店に影響を及ぼせる人材が一番重要だと感じていると思います。

お互いにメリットを与えられるような存在になれば、自然に人脈は築けるようになります。成長する会社の人脈は世代ごとに受け継がれていかなければなりません。

若い人は若い人同士でつながりを築き、お互いに成長して会社の中で地位を確保できれば人脈が続いていくことになります。

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