2015年6月11日木曜日

書店発ベストセラーのつくり方 10

10 塾生が語る

川越の場合
2月末に東京出版社の山本が店にやってきた。
1月から始まったもうひとつの丸山塾で「私のミリオンセラー計画」という宿題があって、山本は10万部計画を実践することになった。

前年成功した、女性作家による女性を主人公にしたミステリーという枠組みで、新宿の書店の担当者と相談して仕掛け始めた『相部屋』を取り上げることにした。
ついてはその作品の売り伸ばしに川越の力を貸してほしいと言ってきた。

確かに前年の作品もそれなりに販売しているし、丸山に協力してやってくれと言われたこともあって、丸山塾の課題である書店発ベストセラーづくりの対象作品として取り上げることにしようと考えた。
 
とりあえず100冊で様子を見ながら、売上が取れれば追加をして、さらに売り伸ばしていこうと考えて山本に注文をした。
100冊での展開を話すと山本も喜んでくれた。
商品が入荷してすぐに、店の通路沿いの平台にPOPをつけて陳列をした。

新宿の店で独自のコピーで売り伸ばしたのは間違いないらしく、川越の店でも同じコピーのPOPとパネルを使わせてもらったおかげで、週売20から30冊をキープして順調に売上が上がっていった。

在庫が少なくなるとボリューム感がなくなり、お客さまへの訴求が弱くなるようで追加注文はこまめにした。
ただ、山本が重版のロットがあげられなくて、たっぷりの商品供給はできないらしく、こまごまとした追加が入る状況だった。

「4月に入ると重版の回数が増えて、潤沢な商品供給ができるようになった」
と言って山本が訪ねてきたので、川越も陳列を200冊規模にボリュームを拡大した。
陳列規模が大きくなりボリューム感が訴求力を高めるようになると、40冊レベルの週売を記録することもあった。

4月の段階で300冊の売上をクリアして、全店一括で商品を供給して中でも、加納の店を含め4~5店舗がリードして売上を伸ばしていき、チェーン全体では1500冊をクリアした。
この数字であれば、山本の10万部計画がクリアできているのかもしれない。

5月7日もうひとつの丸山塾の中間発表会があって、山本が10万部突破の報告をしたと聞いた。
10万部を超えればベストセラーの仲間入りができたと判断できるのではないかと思う。

6月末、川越の店での販売数が450冊を超えた。チェーン内では断トツの1位だが、これを年間で1000冊にするのは難しいかもしれないが、山本も継続して営業をがんばると言っているのでもう少し応援しようと思っている。 


加納の場合
東京出版社の山本が、丸山から紹介されたと言って店にやってきた。
現状では川越の店と山中の店の2店舗が影響力のある売上を記録しつつあるのだが、もう1店舗とびぬけた売上を作る店が欲しい。
3~4店舗の店で仕掛け売りができたら、本部に頼んで、全店規模で取り上げてもらえるのではないかと丸山に言われた。だからぜひ協力してほしいということだった。

塾生の宿題は書店発ベストセラーをつくるがテーマだ。山本が10万部計画を実施しているということは、拠点としての力を発揮できる販売実績を作れば、書店発ベストセラーを作ることに貢献することになる。
そこで私の店でも一等地での展開をするために、100冊注文して仕掛け売りをすることにした。そして、丸山へ計画書を提出した。

山本にとっては3番目の仕掛け店ということだったが、商品が届いて陳列を開始したら、思いのほか店のお客さまに受けたようで最初から良い数字が取れた。すぐに追加注文をして、さらにもう一段ボリュームを上げて商品展開の強化を図りたいと山本に話した。

川越の店と同時進行して、店内の一等地でのボリューム陳列が出来上がったので、3店舗合計で突出した売上を作ることができた。2~3店舗が実績を上げたことにより、本部の商品担当が動いて、チェーン全店に商品を供給すようになった。
全店で拡販するようになると規模の力で売上実績が飛躍していく。3店で協力した仕掛け売りが、山本の10万部計画の手助けになった気がして少しいい気分になった。

これまで仕掛け売りはあまり得意ではなかったのが、パネルやPOPについては山本が積極的に協力してくれたし、川越や大前や大場や塾生たちの奮闘を会合のたびに聞き、POPのコピーや陳列方法の工夫を実例を挙げて教えあった。
みんなが行ったことを自分の店に応用して、陳列方法を手直しできたことで今までより一桁多い売上がとることができたと考えている。

規模の違いがあるのでベストセラーづくりにどれだけ貢献できたのかどうか不安ではるが、自店の週間ベストの第一位を2週続けられたし、それ以外の週でも常に3位以内にいたという事実が自信を与えてくれた。

ついこの間、山本からは10万部を突破したとも聞いた。その後も自店の売上は順調に推移して、5月末には累計売上が300冊を超えた。このペースでいけば500冊越えが狙える状況だろうと思う。


山崎の場合
山崎が待っていた作品が映画化されて、公開に合わせて発売2年後なのに文庫化された。。
当初は出版社サイドでもあまり強気ではなかったようだが、映画雑誌の評判がとっても良くて、何回も特集に取り上げられるようになるとだんだん風向きが変わっていった。

初版部数が映画の評判の高まりとともに大きくなっていき、営業マン事前受注の一店舗当たりの数字が今までにない大きな数に変化していった。

山村書店でも約3000冊の初回配本だったし、山崎の店では70冊だった。
この映画の評判の高さでこの数では瞬殺だろうと判断して、営業の青木に何とかならないか相談したが、本部で決めた数は変更が効かないと言われてしまった。
そうなるといかに早く売り切るかが山崎の最初の仕事だろうと考えた、

入荷してすぐに、駅の改札口に続く通路にワゴンを出して、そこに70冊すべて積み上げて様子を見ることにした。
目標は3日で売り切ること。そうすれば本部の考え方も変わるし、青木も追加の対応をしてくれるだろう。

映画の評判が反映して初速はすさまじいものになった。70冊は2日で売り切れてしまった。
川越から少しだけ回してもらって、品切れは回避したが、このままでは最高売上を作ることなんかできないだろうと考え、再三、青木に電話して商品の手配を願いした。

約半月経ってようやく商品が出回るようになって、ほどほどに満足できる部数を確保して、通りに面したワゴンの商品が200冊を超えるボリュームになり、週売も40冊を超えるようになった。

ここから何か月この売上を維持させることができるかが、山崎にとっての勝負になった。商品のボリュームを落とさないように気を配りながら、毎日様子を探り、青木に注文をお願いする日々が続いた。

発売から2か月が過ぎてもまだ売上は落ちていないし、映画の配給記録もどんどん更新していった。
累計売上が600冊を超えた時点で、これなら1000冊越えはできるだろうと判断することができた。

以前、映画化とともに爆発的な売上を記録した『ダ・ヴィンチ・コード』には及ばないが、それに続く記録的な売上だった。

発売2か月で200万部到達という驚くべき記録になったと青木も驚いて言っていた。
60坪の店で1000冊超えの売上をねらうのは、無謀な試みだと思った塾生も多かったのだろうが、こうして成功の兆しが見えてくると、それほど大変な仕事ではなかったような気分になってきた。

あっけなく成し遂げてしまうと、もう少し手ごたえのある仕事をしたいと思うのが常なのだろう。

山崎はまた別の作品で記録的な売上を作りたいと思った。山中が言ったような1年かけて1000冊売るような売り方も経験してみたいと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿